芍薬~しゃくやく~

白いチョークの粉を指にたっぷりつけて黒板の上をなでる


少なくなったらまたつけて


同じところを何度もなでる


一枚一枚書いて重ねて


一つの花を黒板に咲かせる


今度は


緑色の粉をつけてまっすぐに落とす


何度も 何度も なぞって濃くする


左右に葉を広げる


光をたくさん吸収できるように


大きく 広く 青々と


赤と黄と白のチョークの粉を混ぜて


少しだけ花びらをなぞる


ほんわりと色づいた真っ白い”芍薬”を咲かせた


真っ白な花びらの中にわずかに色づく赤と黄


ふわりと白いスカートをなびかせて教室をでる


”春が来るお知らせです”


くすくすと笑って少女は風に乗って消えた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る