最高の作品


ドクドクと流れ出して俺を染めていくのは俺のあか


ドプリとあふれて床に広がっていくのは俺の紅


どれも俺の紅  俺だけの紅  元々俺だけの紅


本当は見ることができないはずの紅が俺の中から溢れる


溢れてくるところに突き刺さった物はまるで鏡のように俺をうつす


      たまらなく美しい


少しづつ冷たくなる俺の身体が小さく震える


ようやく最高の美を手に入れられたのだと


俺は大切なものと引き換えに最高の”美”を作り上げたのだ


醜いものを映さなくなった目

  汚い言葉を吐かなくなった口

    傷つけることしかしない人々の声を聴く耳


 「やっと完成する。」ビチャッ

    

俺は紅に沈む


この美しい俺の作品を目にした人々は感激のあまり絶叫・絶句して

この美しい俺の作品を皆に知らせるため走って行くのだ




あまりにも滑稽でしょ?

   ばかばかしいでしょ?

     だって製作者はこの作品の完成を見ることは一生ないのだから





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