第36話 団長

 いきなり現れた男。


 その男の正体とは誰なのか。


 正行はその男について知らなかった。


 しかし、源二郎と詩織の2人はその男の正体について知っているようだった。


 言継の名前をその男は呼んだことから赤城団の関係者だろうということは推測できた。



 「赤城団の誰なんだ。あの男は」



 「ほお、俺が赤城団であることまでは分かっているようだな。いいだろう。名乗ろうぞ。俺の名前は水上雄大! 赤城団最強の男! 赤城団の団長さ!」



 「な!」



 正行は驚愕していた。


 いきなり現れた男が赤城団の実力者であろうということは予想できていた。赤城団でもかなり強い言継に援軍としてくることができる人物なのだから強いのは当然だ。しかし、久瑠人物が団長であることなどまったく考えていなかった。



 「だ、団長……」



 美緒も驚愕する。



 「やはり出てきたか雄大」



 「出てきたわね」



 源二郎、詩織の2人が雄大の名前を呼ぶ。



 「おう、源二郎に詩織か。久しいな」



 明るく返答する。


 豪快な男らしい返答であった。


 この人は悪い人ではない。そんな印象を持てた。だが、油断はできない。あいつは赤城団だ。


 正行は自分に言い聞かせる。



 「……はぁ。久しくはないだろ。最後にあったのは1週間前だぞ」



 「そうだね。雄大さんはすぐに忘れるからね」



 2人は呆れているようであった。


 まあ、実際に呆れているだけであるのだが。


 しかし、正行は3人の話を聞いて疑問を抱いた。



 「え? 1週間前に会っている?」



 そう。この3人が1週間前に会っているということに違和感を抱いたのだ。現在、妙議団、榛名団そして赤城団は戦っているはずだ。妙議団と榛名団の戦争は裏から赤城団が仕組んでいた。それは、正行と美緒が探り当てた。


 元々3つの団は対立したりしていた。そんな対立している3つの団の団長が1週間前に会っていた。それは聞き捨てならないものだった。



 「ああ、俺らは1週間前に会っているのさ」



 「そうね。会っているね」



 「1週間前だったかあ」



 3人が口々に言う。



 「何で、会っているんだよ!」



 正行は、しみじみとしている3人の横で1人興奮し叫ぶ。


 1人だけ完全におかしなテンションになっていると言われてもおかしくはないような大声で叫んでいた。



 「え」



 「あ、ああ」



 「そ、それはだな……」



 3人して言いづらそうな表情をしていた。


 目線は正行を避けるかのように地面を見ていた。


 怪しい。


 何かを隠している。


 正行は察した。


 何を隠しているのか。


 正行は、3人に近づく。



 「何を隠しているんですか?」



 「え、ええっと」



 「俺に言えないことがあるんですか?」



 「そ、それはね……」



 「言ってくださいよ」



 「……」



 正行はかなり迫るも3人はなかなか口を割ろうとしていなかった。


 正行は、なかなか口を割らない3人に対していら立ちを覚えていた。早く言えよ。いら立ちはいつしか怒りへと昇華していた。


 正行は、ついに怒りで我を忘れ武力で言い聞かせてやろうという団長に対して絶対に出来ないことをしようとした瞬間にまたまた新たな人物が出てきた。


 その人物はこの場にふさわしくないかなり意外な人物であった。


 その人物とは──



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