第32話 覚悟
赤城団の長野原言継。
榛名団の団長伊香保源二郎。
妙義団の団長木村詩織。
この3人の戦いが始まろうとしていた。
「覚悟ができているか」
「覚悟はいい?」
源二郎、そして詩織の2人が言継に言う。
「覚悟ならとっくにできているさ」
言継は、冷静に2人の言葉に対して応答する。
その表情からは余裕が見える。言継は、正行や美緒を圧倒したがその実力は赤城団の中でも部隊長クラスである。一方の源二郎、詩織はそれぞれの団の団長、すなわちそれぞれの団で最強の実力を持つ人物である。
そんな人物を相手に余裕でいる言継。正行は傍からその様子を見ていてとても違和感を覚えていた。
そんなに余裕でいるということは自分が勝つと思っているのだろうか。それとも本当の実力はもっと上ということなのだろうか。正行はそんなことをずっと思っていた。考えていた。
「こっちからいく。榛名の神よ! 今、怒りを悪なる者を裁くために顕現せよ! 魔術具解放!」
源二郎の魔術具は、どうやら右手にはめていた手袋である。その手袋は魔術具の解放により光り出す。すると、手袋は消え、源二郎の後ろに巨大な化身が出現する。青い体の男だ。かなりの大きさをしている。目からはすごい圧を感じられるにらみをしている。
これが、榛名山の神である。その神を歴代の榛名団の団長は呼びだすことができる。この力は同時期に1人しか使うことができない。この力が使える者が榛名団の団長になり、使えなくなると榛名団の団長を引退する。それが榛名団の中での掟となっている。
「私もいくわよ! 天神よ、今私にすべての力を与えたへ! 魔術具解放!」
詩織も魔術具を解放する。
詩織の魔術具は胸につけてあるロザリオであった。そのロザリオは魔術具の開放に伴い光を発する。光が出た後に現れたのは巨大な鎌であった。
その巨大な鎌を詩織は持つ。詩織の魔術具は物理攻撃を行う巨大な鎌である。その巨大な鎌によって受けた攻撃はかなりの致命傷になる。その実力は妙義団の団長として申し分ない強さになる。
「ほお、さすがは榛名団の団長、そして妙義団の団長の魔術具だ。真正面から受けて立つのは難しそうだ」
言葉では戦うのがつらいと言継は言っているが、表情を見るとニヤついている。かなり余裕があるように見て取れる。どうして2人の団長を前にしてそこまで余裕でいられるのだろうか。正行はまた考える。どうしてそんなに余裕なのか。
「どうしてそんなに余裕でいるのか」
「その余裕を絶対になくしてみせるよ!」
源二郎と詩織は攻撃を始める。
「くらええ」
まずは、源二郎が化身で攻撃をする。
榛名の神は言継に思いっきりパンチをする。
ドッガーン
爆発音がした。
パンチが言継にぶつかったことにより発生したものだろう。源二郎はそう考えた。
しかし、違った。
「なっ!」
源二郎は、今の攻撃で完全に言継はつぶれたものだと思っていた。榛名の神の化身による攻撃は圧力プレスをかけられるのと同じ強さを持っている。あの攻撃をまともに食らったら人間としての形を保つことは不可能である。しかし、源二郎の目に映っていたのは、思いっきり生きている言継だった。五体満足。どこにも負傷していない。そんな状況の言継がいた。
「どうして無事なんだ!?」
源二郎は驚愕する。
「ふふふ、どうしてかな」
そんな源二郎の様子を面白おかしく思っているのだろうか言継は余裕で返答する。
「あいつの魔術具の能力よ、きっと」
驚愕し動揺を隠せない源二郎を詩織がサポートする。
「今度は、私が行く」
詩織が、大鎌を振りかざす。
そのために、言継との距離を一気に縮める。
「くらいなさい!」
詩織の大鎌が完全に言継を捕らえた。
大鎌の振りかざした軌道は完全に言継の首を斬り落とす角度であった。
「もらいなさい!」
勝った。
詩織は、そう思った。
正行も詩織の攻撃が完全に入ったと思った。
横から攻撃を見ているが、完全に首を斬り落とすコースだった。
「いけええええええええええ」
正行は、思わず声を出してしまう。応援する。
今、勝負に決着がつこうとしてい──
「甘いな」
言継の次の行動を誰も予想できなかった。
「え?」
気が付くと詩織は倒れていた。
言継が自分の後ろに立っていた。
「ど、どうして?」
誰も今何が起こったのか分からなかった──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます