第15話 逆転



 美緒は最後の力を振り絞って剣を正行に向かって振りかざしてくる。


 正行は正直余裕であった。



 (この攻撃はかわせる)



 冷静に美緒の攻撃を読んでいた。


 美緒は冷静ではない。文字通り最後の力を振り絞っているのだから。だが、それに対して正行はひたすらにかわし続けていただけでありなおかつ体力が美緒よりもあった。だからまだ冷静に動くことができる。


 だが、正行にとって美緒は女子なのであまり手荒な真似はしたくはなかった。


 襲うという脅しまでかけたが美緒は退かなかった。それだけ榛名団のことを思っているのだと正行はその心意気に感銘を受けていた。


 じゃあ、その心意気に免じてあっさりと攻撃を受けてやるか。そうとはならない。


 そうなってしまえば自分の身が危険だ。


 じゃあ、どうするのか。


 やはり眠ってもらうしかないのかもしれない。


 正行は決めた。


 覚悟を決める。


 そして、行動に移した。



 「ごめん」



 正行はそう言うと自身の刀の鞘で美緒の腹下に一発打撃を与える。



 「うぅ」



 美緒は女子として出してはいけない声を出しそのまま気絶する。



 バタン



 気絶した美緒は体を立つこともできずそのままその場に倒れる。



 「おっと」



 正行はさすがにこのまま床にドンと倒れることがないように美緒の体を支える。



 むにゅ



 「へっ」



 背中を支えようとしたはずだったが正行であったが場所が悪かったのか間違った場所を触ってしまった。


 むにゅという音はそう胸を触った音だった。



 (む、むねって本当にやわらかいんだ)



 正行は人生で初めて女性の胸を触ってしまった。


 だからこそ、童貞のようなコメントをしている。いや、正行は童貞なんだけど。正行も高校生の男子である。女子に対してそれなりの関心を持っている。だからこそ、触ってしまったことにかなりの興奮をしてしまい正常に思考が回らなくなっていた。


 そう。実は美緒は気絶したふりをしていたということに気づいていなかったのだ。



 「甘いね」



 「えっ!?」



 ドンッ



 正行はそのまま美緒に蹴り飛ばされた。



 「ぐぁ」



 正行は思いのほか蹴る力が強かった美緒によりかなりの傷を負った。


 それは立ち上がろうとするもかなり痛くて立ち上がろうとするもできなかった。



 「さあ、逆転ね」



 正行は追い詰められるというさっきとは逆の状況になっていた。

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