第11話 会議
「これから榛名団と戦争状態に入ります。各自準備してください」
『……は?』
妙議団の団員全員は詩織の言っている意味が理解できなかった。正確には理解はできているが頭が理解しようとしていなかった。
誰もがフリーズ状態になってしまっていたが、ようやく1人が口を開く。
「団長、この話は冗談ですよね?」
口を開いたのは妙議団ナンバー2の副団長水上真司であった。あだ名はがり勉眼鏡。年は21である。群大医学部に現役合格し通っているエリートだ。ちなみに出身高校は正行よりも頭がいい前橋市のライバルである高崎市の高校である。
副団長の水上にすら知らされていなかった情報らしい。これほどの重大な案件であれば本来は伝えておかなければいけないものではと正行は思うが、詩織のことだから冗談で済ませるためあえて伝えていなかったのだろうと自己完結した。
しかし、詩織の答えは正行らが考えていたものとは大きく異なっていた。
「冗談で全員集めると思っているの?」
その詩織の答えに対して全員同じことを思う。
(思ってます!)
いつもそのようなことをしているため詩織がやると完全に思っていた全員だった。
「何よ。私だって真面目なことを言うわ。さて、冗談だった……で、済ませたいのは私もよ。事が事だけに重大なの。榛名団が全面戦争を仕掛けてきた。そもそもどうしてか正行わかる?」
詩織はいきなり正行に問題を出す。
正行は慌てながら答える。
「ええっと、異界生物を倒す組織は全部で3つあります。俺ら妙議団、それから榛名団と赤城団。この3つの組織はお互いライバル関係にあり異界生物の月間討伐数により県からの支給される援助金が変わります。また、それぞれの地盤をめぐって争いが起きています」
「そう今回は地盤について榛名団が文句を言ってきたのよ」
詩織の話によるとこういうことだそうだ。
妙議団は県西部が絶対的な地盤である。妙義山を中心とした地域、富岡市、安中市、高崎市、藤岡市、甘楽町、下仁田町、南牧村、神流町は完全に抑えている。そして、近年は県庁所在地前橋市、高崎市でも旧倉渕村にまで進出した。そして、旧倉渕村は榛名団の勢力圏内である。その勢力圏に進出したことにかなり反発してるそうで詩織は今まで裏で交渉をしていたが決裂、今回全面戦争になってしまったそうだ。
「倉渕か。あそこは放棄してもいいんじゃないですか? 特に異界生物の出現率も高くないですし、人口も多くない。我が団が戦争をしてまで守るべき勢力圏でないと思われますが」
ナンバー2の真司は冷静に分析をする。
その言葉に何人かが頷いている。
「いやダメよ。せっかく手に入れた地域。そこをみすみす渡してしまうと他の地域も奪われてしまう。弱さを見せた瞬間一気に他の場所も取られるのが戦争よ。過去に妙議団はその方針を取ったせいで勢力圏が下仁田町だけになってしまった時期があるんだからね。だから、たかが倉渕、されど倉渕なのよ」
詩織の言葉には説得力があった。
「本気なのですね」
副団長真司は諦めたかのように言う。
「本気でやるのか」
正行は、反抗しようと思うがうまくできない。
正行が反対を言うことを最初から分かっていたのか詩織は正行が暴れないように自分の側近を正行の側に配置していた。
「正行、君にはこの戦いに参加してもらわなくてもいい。終わった後に話しましょうね」
そう言い、禅院は戦争の準備を始めた。
正行は妙議団の隔離室へと入れ込まれたのだった。
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