第5話 S級になりました
華の都パパリまで半分も来た頃だろうか。盗賊に襲われた。
売っていた靴を万引きしたのである。
「チート、追え」
父にいわれるまでもなく、ぼくは盗賊の後を走って追いかける。盗賊は、ぼくより年長の若い男だ。
街角を曲がって、人通りのいないところまで追いかけると、盗賊は態度を豹変した。
ぼくに向かって、ナイフを抜いたのである。
ぼくは素手だ。
「おれさまが靴を盗んだって証拠がどこにあるんだ?」
盗賊は、ナイフをこちらに向けたまま迫ってくる。
ぼくは焦って、とにかく、道端に落ちている石を投げた。
「痛えだろうが。やめろや、クソガキ」
盗賊も石を投げ返してきた。
ぼくの体に石が当たって痛い。あざになったようだ。
重さ二十キロはあると思われる大石を持ち上げて、ぼくは盗賊に迫った。盗賊は走って逃げて行った。
どしん。ぼくは、石を地面に落とす。
逃がしてなるか。
盗賊は、仲間と合流して待っていた。盗賊仲間は六人いる。一人で勝てるわけがない。
「だから、盗んだって証拠はどこにあるんだよ」
「その靴が証拠だ」
「これは最初からおれさまのものだぜ」
くそう。
やられたままでいると思うなよ、盗賊どもが。
ぼくは素手で六人の男に戦いを挑んだ。
でででん、ででん、でんでん、ででん。
何を隠そうぼくの職業は、格闘家だ。行商人は父の職業で、それを手伝っているけど、ぼくは格闘家だったのだ。
「靴を盗んだのは、この右手か」
ぼくが盗賊の腕をねじり上げ、左手で、顔面に殴りを叩きこむ。
「ほわたあ」
「なんだ、こいつ、逆らうつもりだぞ。やっちまえ」
「盗賊どもに名のる名はない」
六人がみんなナイフを抜いた。
「あたたたたたたた、ほわたあ」
盗賊たちのナイフをすべて、素手で叩き折り、盗賊たちの足をすべて骨折させ、盗まれた靴をとり返した。
「今までに犯した悪行を悔いるがいい」
「痛え。痛えよう。歩けないじゃないかよお。医者を呼んでくれ」
「運がよければ、死なずにすむだろう」
そして、ぼくは父の店に帰った。
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