第六十九話 波紋

 波風を立てるなと言われるの

 でも

 わたしは波紋が好きなの


 わたしがかき回したところから

 美しい波紋が広がっていく

 様々に

 面白いほど


 あなたは

 べったりと凪いだ日常が続くのが好き?

 波も何もないのっぺらぼうが好き?


 好きならいいけど

 わたしはそんなのつまらない


 黙っていても波紋は出来ないから

 わたしがこうしてかき回すしかないの


 ばしゃばしゃと


◇ ◇ ◇


 トラブルを起こさないと自分を変えられない、主人公になれないと思い込んでいる人が大勢いる。


 だが結局のところ、トラブルメーカーは不心得者として排除され、トラブル解決に尽力した人が主人公として脚光を浴びる。それを見て、さらに敗残者の嫉妬や敵愾心が膨らむ。負のスパイラル。


 そうさ。波紋を起こすことよりも、予期せぬ波紋に突き崩されない堅固な自分を作ることの方がずっと難しいんだ。だからこそ、地道な労を厭って波紋を起こそうとする人が後を絶たない。


◇ ◇ ◇


 傷付いている者は自分の傷しか目に入らず

 傷付ける者は人の傷にしか目を向けない


 そうして

 癒えぬ傷ばかりが増えて行く



【 了 】

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