第六十七話 裏

 裏があると思えば、その裏は実体になる。

 裏など最初からなくても、疑念が裏を作り上げてしまう。


 表に見えているものも、その写り方次第で裏になる。

 本人が、どんなにそれは裏じゃないと否定してもだ。


 誰もが表と裏を区別出来ると信じ込んでいる。

 否。誰もそんなことは出来ない。誰一人として。


 だから、俺は裏を声高に糾弾する奴を信用しない。

 そいつには確かに裏しかないからだ。


◇ ◇ ◇


 わたしは虚実を区別しません。虚実は区別出来ないものだからです。その代わり、虚も実も疑い、虚も実も信じます。


 それが虚であれ実であれ、わたしが受け入れて血肉に出来るものなどほんのわずか。ほんの……わずかに過ぎないのですから。



【 了 】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る