第十三話 Colour me!

白い国がありました


白い国の人々は

いつか自分が彩られることを

心から願っていました


色をもたらす者

それが魔法使いでも勇者でも

竜でもかまわない


自分が鮮やかに彩られることを夢見て

人々は今日も眠りにつきます


◇ ◇ ◇


闇の中で

小さな女の子が目を覚ましました


ママがいないよう

女の子は

泣きながらリビングに歩いて行きました


あらあら

こわいゆめを見ちゃったのね


ママは娘を膝の上に抱き上げて

なぐさめます


さあ

今度は楽しいゆめを見られるように

きれいな色をいっぱい塗りましょうね


女の子は

赤や黄色のクレヨンで絵を描きます


おはな

おしろ

おうま

おうじさま


ぽとり

クレヨンが手から落ちて

女の子はまた眠りの中に戻ります


◇ ◇ ◇


白い国は

いつの間にか鮮やかに彩られていました


沸き立つ人々

その歓喜の輪の中から離れて


わたしはひとり

空を見上げます


わたしの色は

どんなだったろうかと



【 了 】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る