第三十六話 豆の上

 貧相な身形なのに、自分を姫だと主張する若い女。


 王子は、本当に姫なのかどうかを確かめるために、何枚も何枚も敷き詰めた羽根布団の一番下にえんどう豆を一つ忍ばせ、女を休ませました。


 翌朝、王子は女に尋ねます。


「姫、よく眠れましたか?」

「いいえ、一晩中背中に硬いものが当たって、痛くてよく眠れませんでした」


 王子は確証を得ます。この女性こそ、間違いなく本物の姫だと。


 ですが……。


「姫。あなたは、私に何を望んでいるのですか?」

「あなたと結婚すること、です」

「それは構いませんが、あなたは豆の上ではなく、針の筵の上に寝ることになりますよ?」


◇ ◇ ◇


 些事さじを気にしなければ豆の上でも寝られるようになる。が、あなたは大事だいじなことにすら気付かなくなる。


 些事を気にすると全てが大事おおごとになるので、あなたはどこにも寝られる場所がなくなるだろう。



【 了 】


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