君へと届かない物語。

@rabbit-yume

君からはじまった1年前

1年前。俺は君に恋をした。


中3になってからの転校で、知っている人は誰もいなかった。すでに仲のいい人は決まっていて、誰かと話をする気にならなかった。

もともと、人と話すのは苦手だ。どーせあと1年。いつものように大好きな本の世界に入っていよう。


「ねぇ、なんの本?」

「え?」

いきなり降ってきた声に驚き顔を上げた。

「その本、なに読んでるの?」



隣の席の君、大葉真紀と話したのは、これが初めてだった。




「あ、斎藤君!」

いまは、5月。修学旅行として、俺は東京に来ていた。

「え!?大葉さん!?」

「珍しいこともあるもんだねー。まぁ、このアーケードは来る予定にしてたとこ多かったしね。あ、裕太君と同じ班だったんだね。」

ニコニコと近寄ってきた君は、あまり見ない心からの笑顔だったと思う。

ここで、あったのは、彼女が言った通り、ここのアーケードは同じ制服の人がいたのもあって、偶然だと思っていた。本当に、偶然だと。


でも、今思うと、これは必然で。

この時、すでに君の事を好きだったのかもしれない。


8月。彼女真紀と、彼女の友達弥生と花純と、俺の4人で、花火大会に行ったんだ。

1学期の終業式の日、花火大会に誘えたのは、奇跡か、彼女の友達たちに後押しされたからだ。


当日、真紀は浴衣で来てくれた。

黒がメインで、花の柄がピンク、とっても綺麗だった。


しばらくして、弥生と花純は、「うちら見に行きたいとこあるからー」

残った真紀の携帯に届いたメールには一言。

「あとでメールしてねん!頑張って。」とだけ書いてあったらしい。

「ねぇ、あっくん。かき氷食べない?」


それぞれ違う色をしたかき氷を食べながら見た花火は、とても輝いて見えた。


帰り道、君に伝えた。

「俺、真紀のこと好きだ。」

君は、「私もだよ」と、暗かったけど、わかりやすく照れて、真っ赤になった顔を隠しながらそう言ってくれた。


この日から、俺たちは付き合い始めたんだ。


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