第3章「王都の夜」

第18話「配属部隊」

「セシル、ラクロ、テレジオ。おまえたち三人は、アルファルド王国騎士団の入団試験に無事合格し、今日から近衛隊管轄下の王女親衛隊の所属になってもらうことになった」


 名前を呼ばれた三人と騎士団長ダリアンは、謁見の間で静かに王の声を聞いていた。


 アルファルド王国騎士団は、アルファルド国全体の軍隊であると同時に、王都エンデスの治安を取り締まるという憲兵の役割も果たしていた。


 王国騎士団は警邏隊、兵士隊、近衛隊の三つの隊から構成されている、とは数分前にダリアン団長より説明を受けたばかりである。


 憲兵の役割を担っているのは警邏隊で、主な業務は王都エンデスを見回り治安を維持すること。


 兵士隊はその名の通り、戦闘要員を擁する隊で、国の有事の際には真っ先に現場に投入される。

 ここの所属にならなかったことに、セシルは内心胸をなでおろした。


 三人が所属することになった近衛隊は、王族やその資産を守るための隊で、近衛隊はヴィクトル国王親衛隊、アメリア王女親衛隊、マジスタ親衛隊、王宮警護隊の四つの小部隊に分かれている。


「おまえたちが所属する王女親衛隊は、三日後に重要な任務を控えている。詳しくはあとでダリアンから説明があるだろうが、くれぐれも他言しないように頼む。では、ダリアン、よろしく頼んだぞ」


「はい」


 ダリアンはきびきびとした動作で立ち上がり、王に一礼した。

 セシル、ラクロ、テレジオもそれに続き、四人は粛々と謁見の間を退出する。


「俺は本当は兵士隊の所属なんだけどな」


 ダリアンが伸ばしっぱなしの赤茶色の髪を掻きながら言った。


「ま、今は近衛隊のやつらが出払ってるからしかたない。とりあえず寮に案内するから、任務についての説明はそれからだな」


 ダリアンはセシルたち三人を鍛錬場の裏の建物まで連れて来た。

 鍛錬場と同じくらいの大きさのその建物は、王宮内の施設にしてはずいぶんと質素な造りをしている。


「これが近衛隊の寮だ。近衛隊だけ寮が王宮の敷地内にあるんだよな。出勤が楽で羨ましいぜ……。俺は外の兵士隊寮に住んでるから、近衛隊寮についてはよく知らないんだが、一応中を案内するよ」


 ダリアンが扉を開け、ショボい宿屋のようなそこを歩きながら説明をする。


「一階には近衛隊長の部屋と食堂、共用のロッカールームがある。二階はアメリア王女親衛隊、三階はヴィクトル王親衛隊、四階はマジスタ親衛隊、五階は王宮警護隊の階になってるみたいだな。……てことで、おまえたちの部屋は二階だな」


 廊下の端から伸びた階段を、三人はダリアンのあとについて上っていく。


 ダリアンは「本当はこれ、俺の仕事じゃないんだけどな」とからっと笑って言った。


「でも、今、おまえらが所属する王女親衛隊は王女の旅支度でみんな出払ってるんだよな。……っと、おまえらの部屋はここだな」


 ダリアンが、廊下の一番奥の部屋と、その手前の部屋の扉を開ける。


(あれ……二部屋?)


 三人なのに……? と、セシルはなんだか嫌な予感がした。


 ダリアンは手前の部屋を覗き込み、


「こっちはもう誰かが一人使ってるみたいだな。部屋は二人部屋だから、こっちに一人、あっちの空き部屋に二人入ればよさそうだな」


「……!」


 それを聞いて、セシルは言葉を失う。


(ふ、二人部屋……!? てことは……)


 ……男と相部屋、ということか?

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