男と女
破死竜
女→男
日曜日の午後10時過ぎ、女から男へ電話がかかってくる。
男「(携帯電話を取る)もしもし」
女「あ、私」
男「おう、どうした。何か用か?」
女「(媚びた口調で)用が無くちゃ、電話しちゃいけないの?」
男「・・・・・・暇なのか、お前」
女「もー、もうちょっと気の利いたツッコミは無いの? センス悪うーい」
男「喧嘩売りに(電話を)かけてきたんなら切るぞ、おい」
女「わかったわよう。・・・・・・用があるから電話したの」
男「それで?」
女「うーん、何から話そうかな?」
男「(お前の話は)長くかかりそうなのか?」
女「時間、無いの?」
男「いや、きちんと座り直して聞く体勢になろうかな、と」
女「ケータイなんだから黙って動けばいーのに」
男「いやいや、携帯電話だからこそ話をしている時に変な音とかしたら、
『今、どこで何やってんだ?』って、気が散るだろう」
女「ねえ」
男「うん?」
女「そうやってさ、人を納得させるようとして、自分が思ってることとは違ってるのに、相手がうなずきそうな理屈を喋る、っていうのは良くないよ。
『うそつき』とか、『本心が分からない』とか言われちゃうよ」
男「なに心理分析なんかしてんだよ(正しいけどな)。考察しなきゃならないようなことでもあったのか?」
女「・・・・・・すごいね」
男「?」
女「君は、いつも私の心を理解してくれてる」
男「そういう口調でそういう台詞を吐くな。お前の方こそ普通に本音で喋ってる時は俺のこと、『君』じゃなくて『あんた』ぐらいの軽さで呼ぶだろうが。
そうやって、半分演技しながら半分本気で喋るから、お前は『気の多い女』とか噂されちまうんだろうが」
女「うーん、そう言われた」
男「・・・・・・なるほど、あいつの話か、お前の用ってのは」
女「そゆこと。あの人に振られちゃったの、私」
男「またか、最近多いな」
女「その言い方だと、それこそ私が気の多い女だって言ってるみたいよ」
男「・・・・・・すまん。俺の方には最近浮いた話が無くてさ、うらやましくてつい口が滑っちまったんだよ」
女「やっぱ、本音で喋ってもかっこわるいわ、あんた」
男「やかましい(笑)。・・・・・・それで? 愚痴を聞いてほしいのか」
女「うーん、それもあるけど、これからどうしたらいいか、考えたいの」
男「人に話を聞いてもらいながら自分の考えをまとめるってやつだな(女がよくやる方法だな)」
女「そゆこと。じゃあ、まずこれまでのことを順を追って話すね」
主として女が話し、それに男が相づちを打つ形で話が進む。途中で話は男女の恋愛観の違いについての意見になったりしながら(男性は浮気相手は一くくりにするが、女性はそれに順番をつけたがるetc.)続いていった。
そして、午後11時30分頃。
女「・・・・・・というわけで、どうしたらいいと思う?」
男「俺が言わなくても、もう分かっているんだろう」
女「うん・・・・・・、たぶん私が現実を認めたくないだけなんだね」
男「『たぶん』、じゃねえぞ」
女「わかってるわよ!はっきり言わな・・・・・・、やっぱり言って欲しい、のかな?」
男「・・・・・・(女が喋るのを待っている)」
女「ううん、それも違うわ。自分でわかんなきゃ駄目だよね」
男「ああ」
女「どうにもならないことは、あきらめる。前向きに努力して生きていく!」
男「よしよし、もう大丈夫だな」
女「うん、もう大丈夫。話聞いてくれてありがとね」
男「いや、別に」
女「それじゃあ、もう大丈夫だから。おやすみなさーい」
男「ああ、お休み。またな」
電話が切れる。
男「・・・・・・ふう。ちょっと手が疲れたな(携帯電話を置く)」
男「(置いた携帯電話を眺めながら)ま、今夜は無理だろうな。一晩くらい泣き明かすが良いさ。あっさり熟睡できるようなら失恋じゃないし、そんなことで電話してくる程度の女なら、話を聞いてやるつもりもない」
男「何も悩み事が無い代わりにつまらない人生と、しょっちゅう悩まなければならないけれど面白い人生と、どっちがましなのか? ・・・・・・どちらの人生を生きるにしろ、きっと無いものねだりをすることになるのだろうけど、人というやつは」
男の部屋の明かりが消える。
END
男と女 破死竜 @hashiryu
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