第1話「パラレルワールド!?」17
二人を出迎えたのは目を眩ます程の逆光。
「これ明らかに設計ミスだろ……入る人間に迷惑すぎる……サングラス必須じゃねえの……?」
まともに正面を見る事が出来ないのは、この部屋の奥にある窓から太陽と思しき光が容赦なく突き刺してくるからだ。薄目で何とか観察をすると、どうやら真ん中辺りに机と背もたれの大きな椅子があるらしい。そこに座る人物までは……確認不可能。
「学院長、あの……眩しいです……」
「ん、ぬ? おぉーなんかこうした方が神々しく見えて格好が付くと思ってな。そうか相手からは見えないのか……そうかそうか」
レイセスが控え目に一言告げると、奥からは女性の声が。ふざけているような、そんな軽い声。
「誰でもいいから閉めてくれー」
威厳も何も感じない学院長とやらの声によって窓には垂れ幕が掛かる。光のお陰で真っ暗、という訳にはならなかった。それを機に顔を確認してみようと昴。そこに居たのは――
「ちっさっ!」
「……む?」
――少女だった。昴の言葉を耳にして不機嫌そうに顔を顰め、可愛らしい顔には似合わない仏頂面で言う。
「姫様……っとこっちでは内緒だったか。彼女が必死に懇願するから一体どんなのかと思えば……ただの不男じゃないか」
「誰が不男だって? まぁいいやもう、いい加減驚く気も失せて来たぜ……」
「学院長、こちらが私の――」
レイセスが説明しようとしたのを小さな手で制し、自身で紡ぐ。
「モロボシ・スバルとか言ったか? これを編入させろ、と」
「子供の癖に他人をこれ扱いすんなよ、物じゃねえんだから。親に教わらなかったか? 俺は教わってないけど」
「あ、スバル……学院長にそんな事言ったら……!」
そんなレイセスの言葉を聞いて、昴は首を傾げて学院長に視線を投げてみた。するとどうだろうか。小さな体をわなわなと震わせると豪華そうな髪飾りが金属音を立てて揺れている。
「二度目だな?」
「……? 何がだ?」
机の上で握り拳を固め、端正な顔を真っ赤にして叫ぶ。
「二度目だ。お前が、私の事を、子供扱いしたのは! 許さん、やれ!」
入り口の扉が乱暴に開かれ、そこから登場したのは二体のあの石像。瞳を深紅に染めて昴を睨み付けている。今にも襲い掛かってきそうな形相――元からこのような顔だったかもしれないが――だ。
「っ!?」
突如、何の前触れも無くその二体が拳と脚を振り下ろした。容赦のない一撃は絨毯の敷かれた床に大穴を開け、破片となった床の欠片が宙を舞う。そんな重く速い攻撃を勘と反射神経をフルに活用して辛くも避ける。勿論、隣に居たレイセスは軽く突き飛ばしておいた。このくらいなら精々尻餅をつく程度だろう。
「あ、危ねえな! 当たってたらどうするつもりだ! レイは大丈夫か!?」
「はい、なんとか……」
「ああもう、うるさい! お前が私に暴言を吐くからだぞ! 当たってしまえ!」
「それがトップの人間の態度かよっ! これだから教師って奴らは……!」
滅茶苦茶だ。そんな言葉すら掻き消すように石像の一体が追撃を掛けようと振りかぶっていた。机越しに学院長を責めるような形になっていた昴は、避ける方向を即座に判断する。こちらからの攻撃は無理――強度的な問題で――、前に転がるのは無謀、左右は比較的安全か? と至ったところで目の前の学院長が視界に入った。瞬間、行動に移る。
「くっそ……!」
「ちょっ、何を!?」
「良いから黙ってろッ!」
机に土足で上がり、小柄な体を抱え、飛ぶ。その直後、昴が足を掛けた木製と思われる机が粉砕されるという寸でのタイミングだ。抱えた学院長を衝撃から守りつつ何度か床を転がる昴。当然ながら、痛かった。軽いのが幸いしたのだろう。
それから騒ぎを聞きつけた教員たちが血相を変えて飛び込んで来るのは、直ぐの出来事だ。
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