シックスエピソード
桜雪
1年生 授業参観
授業参観、私には忘れられない出来事だ。
小学校1年の授業参観って、親にとっても大事なイベントではないでしょうか?
私が学生の頃は今では考えられない、先生がたくさんいたのだ。
今だったら大問題なエピソードである。
その日、授業参観ということで、
給食の後は、いつもより少し落ち着きのない昼休み。
少しフライング気味の母親が廊下をウロウロしている。
なんか、いつもより、はしゃげない小学1年生の昼休み。
始業ベルが鳴る前に、教室の後ろから、母親がまばらになだれ込む。
後ろのドアがガラッと開くたび、みなチラリと後ろを振り返る。
自分の両親の姿を見つけると、はにかむ子供たち。
普段見慣れない服を着た母親に、こちらも緊張してしまう。
この日ばかりは、みんな普段よりテンションセーブなのである。
担任が入ってくる。
号令がかかり、挨拶を済ませて着席。
普段通りを見せるという目的なのだが、大概、先生もジャージからスーツに、この日限りの衣替えであることが多い。
先生も生徒も父兄も、みな特別な日なのであるが、ときに、そういうことに無頓着な先生が生徒が父兄がいるものである。
私の担任は、無頓着なタイプであり、私もまた無頓着なタイプであった。
その日は国語の授業だったと記憶している。
順番に教科書を朗読させ、その後は、ひとりひとりに感想なり、登場人物の心情などを聞いていく。
私は、席順でいうと、だいぶ後半の発言になる。
現在進行している話題とは絶対無関係だと判断した私は、窓から外を眺めていた。
教室の後ろに母親が居ようが居まいが関係なかった。
外は良い天気である。
雲がいろんなものに見える。
ウルトラマンのように見えた雲が、流れていくうちにバイクのように見えてくる。
飽きないのである。
授業の流れは耳では聞いていた。
○○君あたりから、授業に参加すれば十分リカバリ可能である。
要は、○○君というキーワードで参加、それでOKであった。
「桜雪クン!」
担任が私を名指した。
「桜雪クン、どう思いましたか?」
青天の霹靂である。
私の番には、まだ2列はあったはず、なぜに、10人以上飛び越えた。
「△△クンと同じです」
切り抜けたと思った。
私は最後に少し前に答えたと思われる、△△クンに便乗したのである。
「そうですか、△△クンは、なんて言ってましたか?」
しっぽを切り離して逃げたと思ったら胴体をガッチリ掴まれました。
「……聞いてませんでした」
教室に気まずい空気と軽いざわめき。
「廊下に立ってなさい」
担任は私に罰を与えた。
廊下に行く途中、教室の後ろを横切る私。
父兄の前を下を向いて横切って、廊下に行くのである。
死の行進である。
途中には、私の母親が立っているのである。
家に帰ったら、またビンタである。
廊下で立っていると、校長先生が各クラスを見回っている。
校長先生もまさかの遭遇である。
授業参観日に廊下に立っている1年生である。
「立たされてるの?」
校長が私に声を掛ける。
「はい」
と小さく返事する。
「ニシムラ先生か……」
そういうと、クラスを覗いて帰って行った。
みなさんは経験あるでしょうか?
または、そんなヤツいたでしょうか?
授業参観日に廊下に立たせられる小学1年生を。
私は小学校6年間で、授業を受けた時間より、
廊下で過ごした時間のほうが長いのではないか?という6年間を送ることになる。
これは、記念碑的な初めて立たされた日である。
私は校長が去った後、退屈に負けて、授業が終わる前に家に帰った。
母親より早く帰宅したわけだが、母親が私のランドセルを持って帰ってきた
数秒後、往復ビンタされたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます