今ここにある寿司は
寿司は古くは千年以上昔、奈良時代から存在が知られている。
当時の寿司は魚を飯と塩に漬け込んで発酵させる「なれずし」だったと考えられているようだ。
当初はそのなれずしの飯を除去して食べられていたそうだが、室町時代になって一般庶民に米食が浸透し始めてから飯も一緒に食べるようになったそうだ。
そして時は流れ、今や世界中に知られている寿司といえば江戸前握り寿司であろう。
握り寿司は文政年間(1818-1831年)に完成されたそうで、これの創案者は江戸三鮨のうちの一つ「与兵衛寿司」の創始者、華屋与兵衛とも同じく江戸三鮨の一つである「松ヶ鮨」の創始者、堺屋松五郎とも言われている。
握り寿司は瞬く間に江戸中に広まり、明治の頃には箱寿司が中心だった大阪にも広まったそうだ。
そして第二次大戦後、食糧難の中で寿司は規制されたが人々の尽力で復活し、その後は高級料理という形に落ち着き、現在に至る……。
「まあ、簡単に言ったけどこういう事だよ」
「お寿司っていろんな事があって今こうしてここにあるのね」
「そうだよ。まあいつもそんな小難しい事思ってろとは言わないけどさ、たまにはそう思いながら食べるのもいいんじゃない?」
「そうね。さ、食べましょ」
そう言ってカップルらしき男女二人は手を合わせてから出前の寿司を食べ始めた。
うん、美味そうに食べているな。そして歴史も知っている。作った甲斐があったわ
「ん? 何だ今の声は?」
「私にも聞こえた。ねえ、今のってもしかして」
「そうだな、誰なのかは知らないけど」
最初にあなたが作ってくれたおかげで今こうして皆が美味しい寿司を食べれてますよ
二人は天井を見上げてそう言った。
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