大嘘つき
「なあ、俺達もう別れようや」
彼が突然そんな事を言った。
「え、何でやねん!? 理由を言うて!」
あたしが聞いても彼は黙ったままだった。
それからどの位経ったか、彼が口を開いた。
「……実はな」
「うん」
「今日はエイプリルフールや」
彼が笑いながらそう言……って、事は。
ドゴオ!
「何も殴らんでええやろが!」
おお、ほっぺた押さえて痛がっとる。
「アホ! いくらエイプリルフールでも、そんな事言うて欲しくないわ!」
「あ、ああ、悪かったわ」
「ふん!」
その後、彼がひたすら謝り続けたので許してあげた。
「ほな、また明日な」
「うん」
そう言ってあたし達はそれぞれ家路についた。
「この大嘘つき。また明日って言ったやんか」
彼は何も言わない。
だって彼はあの後、事故に巻き込まれて。
「ねえ『嘘だよ』って笑いながら出てきてや」
けど、返事はなかった。
今日はあれから一年後のエイプリルフール。
目の前にあるのは、彼が眠るお墓。
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