ずっと勘違いしてるからね!

 バレンタインデーの時、あいつはたくさんの女の子からチョコを貰ってた。


 あたしもあげたわよ。部活の帰りに義理だって言って。

 

 あいつはなんかかる~く「サンキュー」って言っただけだった。


 まあ義理だから……

 

 そう、義理よ。あいつにとってはね。




 三月十四日。

「はい、これ」


 あいつが部活の帰りにそう言って渡してきたのは綺麗にラッピングされた箱だった。

「え、何これ?」


「開けてみてよ」


「う、うん」


 そう言われて開けてみると、入っていたのは真珠のネックレスだった、って


「ちょ、ちょっとこれって何よ!?」


「何って今日はホワイトデーだろ。この前のお返しだよ」


「ええ!? こんな高いもの皆に渡してたら破産しちゃうでしょ!? あんたん家って金持ちってわけじゃないでしょうが!」


「は? それお前にだけだが?」


「え、何でよ!?」


「何でって? 本命でもないのにお返しして勘違いさせたら悪いだろが」


「じゃああたしなら勘違いしてもいいって言うの!?」


「いいよ。お前には勘違いして欲しいから」


「……!?」


「で、どう?」


「どうって……ああもう! ずっと勘違いしてるからね!」


「うん、ずっとしててくれよな」

 あいつはいつもの調子でそう言った。

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