ちいさなあくむ

小さな女の子が一人。

ベッドに横になっています。


今夜も独り。

昼間はいてくれるお父さんも、お母さんも、看護師さんも、夜はいません。


女の子は、両腕を伸ばして闇をまさぐります。

そこから何か形のあるものを取り出そうと。


でも。

その手は虚しく空を切ります。


痩せた腕が、掛け布団の上にぽそりと落ちました。

女の子は、いやいや目を瞑ります。


今夜も。

小さなゆめが、女の子の船を揺らします。

ゆうらり、ゆうらり。


◇ ◇ ◇


とおのいてゆく おおうみに

きのうのかけら ふりまいて

わたしをのせた はとがとぶ

はかないゆめの にじのはし

ぜんまいのびて またきえる



そとあかるいと みんなこないの

よるはさみしい みんなねてるの

ごはんもひとり えほんもひとり



ひとりでいると ゆめをみる

ながいながあい ゆめをみる

ぎんいろとけい ぱかりとあいて

きんいろのはり かちりとなって

よるのしっぽを わにしてしまう

うそでいいから あかりをつけて



(各行の頭をつなげると、植物名になります)



【おしまい】


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