アイスクリームと三人の小人
最近の子供はませている。
私だって昔はそうだったのだから、あまり言えたものではないがそれにしたって最近の子供はませている。
「桃子ちゃんは誰が好きなの?」
この話が始まると長いんだよなとげんなりした顔でテーブルを囲むメンツをを見た。
えりかちゃん、かおりちゃん、あおいちゃん。
三人とも私が園で仲の良い女の子達だ。
えりかちゃんは勝気でおしゃれさん。
かおりちゃんはおしゃべりでピアノが上手。
あおいちゃんは大人しくて動物が好き。
そんな三人に囲まれ、私はいつものように言葉を続ける。
「わたしはぱぱが好き」
こう言っておけば桃子ちゃんってばまだ子供ねで解放される。
うっかり男の子の名前を言おうものなら、それこそ根掘り葉掘り聞きまくられる事となるのだ。
わたしに質問したえりかちゃんはえーと声を上げて有り得ないという顔をしている。
そんなこと言われてのなあと思う。
私は見た目四歳でも、中身は二十歳超えている。
そんな私に好みを聞かれても園児は対象にならない。
これで駄目なら園の先生名前を言おう。それなら納得してくれるだろう。
そう思っていると、かおりちゃんがじゃあお父さんの次に好きな人はと聞いてくる。
やっぱり続くんですね。この話。
ちなみにえりかちゃんは若葉組のこうたくんが。
かおりちゃんは星組のとおるくんが好きらしい。
あおいちゃんは親戚のお兄さんが好きなのだとか。
「えっと、じゃあ春也先生」
春也先生とは若葉組担当の信任先生。今年で二十六らしい。
優しい顔立ちにさわやかな雰囲気のある好青年だ。
この人もきっともてるだろうな。
そう思っていた矢先かおりちゃんが、がばっと立ち上がった。
嫌な予感がして止めようと席を立つが遅かった。
「せんせー桃子ちゃん先生が好きなんだってー」
なんという事だろう。ぱぱじゃ駄目と言われたから答えた私だけが吊るし上げに遭うとは。
園児怖い。
声をかけられた春也先生は嬉しそうにありがとねと言って頭を撫でてくれた。
まあ、そうなるわなと思っていたわたしを数人の男の子がはやし立てたが、冷めた目で見たらすぐに止めてくれた。
わあわあ騒ぐ教室の中、隣の机に座っていたかすみちゃんが恨めしそうにこちらを見ている。
どうやら、春也先生は本当にもてるらしい。小さな少女にライバル認定されてしまった私は窓の外を眺める。
大丈夫。私は先生を取ったりしないし、多分先生彼女いるんじゃないかな。
明らかにペアだと思う腕時計を横目に見て乾いた笑いを漏らした。
要らぬ事を言うのはよそう。小さな女の子の片思いがもうしばらく続くように。
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