ウラオモテ×ハーレム
あいはな
第1章〜春〜
第1話 桜並木の下での出会い
清々しい春の香り。
辺りにはピンク色の桜の花びらがひらひらと舞い落ちている。
桜とは、こんなにも優美なものだっただろうか。今まで見た中で、一番華やかであり、美しい。心の中が浄化されるようだ。
僕、
今日は入学式。記念すべき一日。
この春から僕は高校生になる。
これからどんな楽しい高校生活が送れるのかと期待で胸がいっぱいだ。
遠足に行く前の小学生のようにワクワクしすぎて、我慢できずに予定の登校時間より二時間も早く来てしまった。
当然こんな朝早くに人がいるわけがなく、僕はこの壮麗な桜並木に一人きり。裏を返せば、この景色を独り占めしていることになる。
これはこれで貴重な体験かもしれない。
「ん?」
と思ったが、僕の視線の先にはうずくまっている女性が一人いた。
その女性は上山高校の制服を着ており、それが新品も同然なことから勝手に新入生だと推測する。僕と同じようにワクワクしすぎて早く来てしまったのだろうか?
「あの、大丈夫ですか?」
僕はその女性に近寄り、手を差し伸べながら声をかける。
それに気づいた女性はゆっくりと顔を上げた。
「――っ!」
僕はその女性の顔を見た途端、思わずドキッとしてしまい、電流が走ったかのように身体を震わせた。
艶やかな黒い髪は長く、パーツが綺麗に整った端正な顔立ち。目元にはほんのり涙を浮かべ、頬を赤らめていた。そしてぷるんとした唇に、僕の目は釘付けになる。
一言で表せば――超絶美人。
女性は無言のまま僕のことを見つめ続ける。
僕は顔を赤らめながらどうすればいいのかわからずに、とりあえず無心で見つめ返す。
…………。
沈黙のまま、にらめっこ状態が続く。
僕は耐えられず、いつの間にか重くなっていた口を開く。
「あ、あのっ――」
「あなた……新入生?」
僕の声を上書きするように、女性が口を開く。その時すでに女性の目に浮かんでいた涙は消えていた。
「え、あっ、はい。そうですけど……?」
僕は突然の質問に困惑し、少し声が裏返る。
返答を聞いた女性は、人が変わったようにニヤリと笑った。
そしてスッと立ち上がり、見下すように僕の顔色を伺うと、僕の頬に手を当て撫で始める。
一六十センチに達していないという男子にしては小さい僕より少しばかり背が高い。
ふわりと優しい風が吹き、女性の黒髪がサラッと宙を舞う。
「あなた、かわいいわね」
「そ、そ、そうですか……?」
僕はこの状況を理解することができず、さらに困惑する。
女性はゆっくりと僕の耳元へ顔を近づけた。
――いったいこれから何をされちゃうの⁉
「……捕まえた」
「え?」
女性に囁かれた瞬間、僕の身体は宙に浮いていた。というか、正しくは身体を縄でぐるぐる巻きにされ、一番近い桜の木に逆さまの状態で吊るされていたのだ。
「今日からあなたを……調教します!」
「……はっ⁉」
清々しい春の香りはどうやら勘違いだったようです。
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