かなとちづるの甘い生活
秋野
スウィートハニーロリポップ
「ねぇ、知ってる? 棒つきキャンデーのことをさ、英語でロリポップっていうんだって」
「ロリポップ?」
「そう」
「じゃあ、これもロリポップなんだ」
くわえているチュッパチャップスを口から出して見せると、そういうことね、という返事が返ってきた。
「なんかエロティックな響きだね」
「そう? 私は可愛い響きだと思ったけど」
「ゲイバーの店名になってるのをみたことあるせいかもしれないけど」
「そうなの? どこの店?」
「現実じゃなくてまんがで。ほら、前あたしが読んでた、『西洋骨董洋菓子店』」
「あぁー、あれかぁ。あれ面白いの?」
「おもしろいよ、ケーキがおいしそうだし」
「
「
「いい、二次元には興味ない。料理も、ゲイも。何の慰めにもならないもの」
「リアリストだね、千絃は」
本当にそうなのだ、千絃ときたら、他のものはフィクションもノンフィクションもこだわりなく読むくせに、料理まんがと同性愛が題材の本やまんがだけは絶対にノンフィクションでないと読まない。だから私が何冊か持っているボーイズラブの漫画や小説は開いてみたことさえない。でも、私が料理まんがからヒントを得て料理を作ると、千絃はとても喜んで、嘉和は天才だと手放しで褒めてくれる。
「嘉和はロマンティストでしょう」
「あたしがロマンティストなら、世の中の料理まんがとBLが好きな女は皆ロマンティストになっちゃうよ」
「そう?」
「そう」
「――ねぇ、千絃、ロリポップの中で何がいちばん好き?」
「味? メーカー?」
「両方」
「……ペコちゃんのぶどう味」
「あたしはこれ、チュッパチャップスのストロベリークリーム」
「そんなの甘すぎるじゃない」
「これ舐めた後にキスするの好きなくせに」
「そりゃ、甘いからね」
私は反論の意味も込めて、ストロベリークリーム味のロリポップを舐めていた舌で彼女にキスを迫る。
「―――ねえ、今度ストロベリーの香りのグロス付けてきてあげようか」
キスの後で千絃が不意にそう言った。
「…香りだけじゃヤダ、味つきがいい」
私がそう答えると、ほんとに甘いのが好きね、嘉和は、と千絃の長いまつげが笑った。
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