第21話
しばらくして、粘り気のある水音がトイレの個室に響き始めた。
さっきまで痛みに震え縮み上がっていたそれは、現金なことに快感へ誘うよく知った感覚に、絶頂への期待を膨らませ先走りを滴らせていた。
ふと、西條の方へ目を遣ると、彼は携帯のカメラをこちらに向け、僕の醜態をレンズの奥におさめていた。
僕はぎょっとした。
音はしないから、おそらく動画なのだろう。
一体何のためにこんなものを撮っているのだろう、と嫌悪の混じった疑問が頭をよぎった。
「さっさとしろよ」
西條は舌打ちをして僕の絶頂を急かした。
僕の方としても早くこんな無意味で屈辱的な時間を終わらせたかった。
逸れた意識を下半身に集中させ、扱く右手を加速させた。
絶頂はあっけないほどすぐにやってきた。
頭の中は気だるさと妙な達成感で満ちていた。
白く濁った精液が太股や便座、床の上に点々と散っているのを見て、途端に正常な羞恥心が目を覚ました。
僕は居たたまれなくなりトイレットペーパーに手を伸ばそうとした。
しかしそれは彼の次なる命令によって遮られた。
「そのまま便座の上に膝立ちしてケツをこっちに向けろ」
精液をふき取ることすら許されず、僕はタンクに掴まって背を彼に向けた。
信用ならない者に背を向けるなど、不安以外のなにものでもない。
恐る恐る背後を振り返る。
すると、容赦なくお尻を平手で叩かれた。
「顔をこっちに向けるな、萎える。あとケツをもっと突き上げろ」
言われた通り顔を前に向け、じんじんと痛みが響くお尻を、脚が震えるほど限界まで突き上げた。
しばらくすると背後の気配が、ぴたりと僕に密着した。
驚きの声を上げる間もなく、左手で口を塞がれる。
それと同時に、右手が下半身の窄まりにねじ込まれた。
全く予期していなかった突然の圧迫感に、驚愕と嫌悪が悲鳴となって喉の奥から突き上がった。
けれど悲鳴のほとんどは彼の汗ばんだ拳の中に吸い込まれ、彼の嗜虐心を煽る以外、何の役にも立たなかった。
「そんなに嫌がるなよ」
熱い吐息混じりの笑いが耳たぶに滲んだ。
「……本当にあのイケメンとヤッてないんだな」
固く閉じた窄まりの更に奥へ指先を押し込めながら西條が呟いた。
強烈な異物感に熱を持った吐き気が込み上げてくる。
「まぁ考えれば、女装していること必死に隠そうとしているんだから当然か」
喉元で笑いながら一人で勝手に納得すると、ずるりと指を引き抜いた。
それと一緒に、異物の侵入をこれ以上許すまいと強張っていた緊張までもが体から抜けてゆくのを感じた。
しかし彼の手は侵入を諦めたわけではなかった。
彼は裏筋に伝う精液を指先になすりつけて、ぬめりを纏った指を再度窄まりへ滑り込ませた。
ぬめりの助けを得た指先は、さっきよりも容易に奥へと侵入してきた。
そのあまりにも滑らかな動きに、困惑の悲鳴が千切れ千切れ彼の手の中に零れ落ちた。
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