原初神族5

「リベルを連れ戻しに来た?なんで?」

「一番目の僕が仕事を放り出していなくなってしまったから、仕事が滞っているのです、と僕はテロリカへ言った」

「具体的には?」

 リベルが尋ねる。

「具体的には三千年分ぐらいの歴史の編纂、七万五千三百冊の書物の複製記録が終わっていません、と僕は一番目の僕へ言った」

「なんでそんなに溜まっているんだ」

ひとえに、僕ら上位神族のスペックの不足、それに並び僕らの個体数の不足です、と僕は一番目の僕へ言った」

「それで、僕に戻ってきてほしいということか」

「はい、あなたが仕事を僕らに押し付けてから一万年弱、僕たちはあなたに過労死という死に方をプレゼントしようと考えました、と僕は一番目の僕へ言った」

「断る。人手が足りないというのならば、なぜ増やさない。僕はそれを君たちを作るまでは一人でやっていたんだ」

 と、リベルとリベルティは口論を始めてしまったので、隣で暇してたトラトに話を聞く。

「リベルの神族としての仕事ってどんなことなの?」

「ん?うちも詳しくは知らんけど、確か書物の神の仕事は「全ての歴史を書物にする」ことと、「全ての書物を永久に保存するために複製を作る」やったかなぁ。しょーじき、死ぬほど忙しい神やな。やで普段は城からぜーんぜん出てこーへんし、一日中歴史を記録してるらしいで」

「それ、めちゃくちゃ忙しいんじゃないですか」

「二番目のリベルはそれで過労死したって噂もあるでなぁ」

「うわぁ」

 忙しいってレベルじゃないんじゃないんですかね。神も過労死する過酷な職場ってとんでもないですね。

「それに比べてうちなんかは楽なもんやで。天命の契約書での契約を強制力つこーて履行させたりぐらいやな。その天命の契約書も最近じゃ滅多に使われんから暇でなぁ」

「暇だからって遊びに現世来て怒られてるんでしょ?」

「頭が固いやつがおるでなぁ」

「怒られる前に帰った方がいいんじゃないですか」

「そやなぁ。そろそろ帰るかぁ。じゃあ天界連れてったるのはまた今度やな。いつでも連絡してくれればええで」

「これ使えば仕事やから」と一枚の紙を渡してくる。それはトラトのサインが入った、「コントラクトゥスの七番目は呼ばれたらテロリカのところへ行くで」と書いてある天命の契約書だった。

 そしてトラトはリベルティが出現させたのとは別の門を出して、天界へと帰って行った。

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