原初神族4
出現した門からは誰も出てこず、開くどころか全く動く気配もない。
「ところで、暫く様子をみていますが、誰も出てこないじゃないですか」
「おっかしいなぁ、いつもはすぐ出てくるんにな?」
「こちらから開けてみればいいんじゃないか?別に一方通行というわけでもないはずだろ?」
「わざわざこっちから開けんでもええやろ」
「怒られるからですか」
「怒られるからやなぁ」
「開けるよ」
自分が怒られるのがわかりきっているからこちらから門を開けたくないというトラトを無視してリベルが門に手を掛ける。と、突然門が向こうから開き中から手が伸びてきて、リベルの腕をつかんだ。
リベルの顔から血の気が引き、真っ青になって呟く。リベルには誰が腕を掴んだのか心当たりがあるのだろう。
「何番目だ……?」
何番目?
「僕は、3番目のあなたですよ、と僕は1番目の僕へ言った」
門から出てきたのは、リベルを幼くしたような少年、外見だけならば私よりも年下に見える。神族だから年下に見えるだけなのだろうけど。
「その喋り方は何とかならないのか」
「この喋り方はあなたが僕に仕事を全部押し付けた弊害というものです、と僕は一番目の僕へ言った」
感情が抜け落ちているように見えて、いちいち自分が誰に向けて発言したのかを付け加える。言っていることから察するに、彼がかつて、リベルに仕事を押し付けられた後任、つまり、リベルが作り出した上級神族ということですね。
「あーなるほんなぁ、リベルってあれか、引きこもりでぜーんぜん出てこーへん書物のリベルかぁ」
「僕は好きで引きこもっているわけではない、と僕は七番目のコントラクトゥスへ言った」
「その何番目ってリベルも言ってましたけど、なんなんですか?何となくわかりますけど」
番号をつけて管理する必要があるのかな?別の名前にしたらダメなのだろうか。
「番号は単に作られた順番だよ。神族は繋がっている概念の名前を名乗っているからね、番号で個体を表しているんだ。コントラクトゥスは契約、リベルは書物という意味なんだよ」
「僕を無視しないでほしいです、と僕は一番目の僕、七番目のコントラクトゥス、テロリカに言った」
忘れてた。
「で、その、えーと、君のことは何て呼べばいいのかな?」
「僕ですか?リベルですけど、と僕はテロリカに言った」
「そっちのリベルもリベルなので混乱してしまうんですけど」
「ならば僕のことはリベル・テルティウムと呼んでください。三番目という意味です、と僕はテロリカに言った」
「長いので、リベルティと呼びますね」
「構わない、と僕はテロリカに言った」
「ありがとうございます。で、リベルティはなんのために現世に来たんですか?」
「僕は一番目の僕を連れ戻しに来ました、と僕はテロリカに言った」
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