原初神族2
「それが前に話してくれた、「死ぬ方法を見つけた人」ですか」
「いや、違うよ。生命を得た僕達は、概念に自我を持っただけのような存在から、肉体と魂に縛られる身となってしまった。でも、死ぬことは叶わなかったんだ。概念と結び付けられ、管理する存在の僕たちが死んでしまっては概念が崩壊し、世界が混乱してしまうからなのか、概念が原初神族の自己を補完しているからなのかはわからないけどね」
死を望む原初神族が一人現れ、死ぬことができるようにしようとしたけど、その段階では失敗したんですね。
「ほとんどの原初神族は生命を得たところで、死を望んだりしなかったんだけど。一部の肉体を得たことで仕事が激務に変わった原初神族が死による解放を求め始めたんだ」
仕事が辛すぎるのに辞められないから、何とかして死んで、この重労働から解放されたい。そういうことでしょうね。確かリベルは天界での仕事から逃げ出したとか何とか言ってましたが、その類なんでしょう。
「そして、そのまま時は流れ、ある日、一人の原初神族が死ぬ方法、原初神族が永遠の生から解放される方法を思いついた」
「それが上位神族を作って概念の管理者としての仕事を譲渡するってことやったわけやな。それなら概念の崩壊も気にすることあらへんし、概念が補完してくることもないやろ?」
「説明を横取りするのはやめてくれないか、今いいところだったんだけど」
リベルの語りを聞いているだけで退屈だったのか、トラトが話に説明をかぶせてきた。
「残念ながらそれは違う。それも方法の手順の一つではあったけど、実際にどうやって概念との結びつきを譲渡した後に死ぬかの詳しい方法は僕は聞いてないから知らないんだ。彼曰く、聞いたらそのまま死んでしまう可能性があるからって、先に概念の引継ぎをしてからしか教えてくれなかったんだよ。僕は仕事の内容的には死を望んでもおかしくないタイプだったけど、死ぬことを恐れて、ついぞ彼が死んでしまうまで聞くことはできなかったのさ」
「ちょっと待ってください。それじゃあ、上位神族を殺す方法がわからないから結局何してもリベルは殺せないってことになるじゃないですか。なのになんでリベルは不死特性をこんなにもたくさん獲得する必要があったんですか」
「それに関してなんだが、あの時は、噂話にも死ぬ方法の話題が上がるほど広まっていてね、その方法は知っている状態で死ぬことを望むことで死ねるとかいう噂も聞いていたから、噂に紛れて本当の話が出回っていて、うっかり死んでしまったりしたら困ると思っていたんだ。そうして僕はありとあらゆる記録から不死を得る方法を探り、実行していったんだ。そんなことをしているうちに、気づいたら僕意外の原初神族は上位神族を作り、死んで世界から消えて行ってしまった、というわけさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます