勝負5

 思い出せそうで思い出せない感じで考え続けるトラトは、全くこちらの話を聞いてくれずに考え続け、そこへ様子を見にリベルがやってきました。

「テロリカ、僕へのお客さんじゃなかったのかい」

「いえ、私に用があったみたいですよ?」

「へぇ、珍しいね。ん?君は確か、コントラのとこの7番目じゃないか?」

 リベルはトラトのことを知っているようですね。

「へ?うちのこと知ってるん?」

「知っているさ、君がまだ小さかったころは僕もまだ天界にいたからね。いやー大きくなったもんだ。いや、大きくなって、るかな?」

 少し視線を落としながら補足したことに、対しトラトは思いっきり、鳩尾を突いた。

 体形のことは禁句らしい。実際、背は私の方が低いものの、胸囲に関してはいい勝負だろう。私は言わないけど。

「なんでリベルはそう、一言多かったりするんですか」

「いや、ちょっと癖になっててね。相手を怒らせると躊躇せずに殺してくれるからさ」

 そういえば、最初に会った時も勝手に部屋に入り込んでましたね。あれも私に殺されるように仕組んでたんでしょうか。

「え、なんなん?このリベルとかいう神に無礼なこいつ、殺してええんか?」

 その発言を受けて、トラトは驚いたように確認してくる。

「いいですよ。これ、殺しても死なないんですもん」

「殺しても死なん?なんや不死者かいな、んで、テロリカの嬢ちゃんが死神。ふーん、そういうことかい、一筋縄ではいかんよーな奴やから、うちの力で魂を引っこ抜いて殺そうって腹やったわけな?」

「そういうことです」

 察しが良くて助かります。

「うちの神力は結構強いはずなんやけどなぁ。それで強制力が効かんってのはどういうことや?」

 じろじろと嘗め回すようにリベルを観察していく。

「なるほどなぁ、あんた、これ嬢ちゃんに言ってへんってことは、言われたら困るんか?」

 ずいっと、下からリベルの顔を覗き込むように顔を近づける。

 何でしょうか、リベルは私に内緒にしていることがあるんでしょうか。

「いや、別に困ることはないが……。できれば言わないでもらえると助かる」

 リベルはまっすぐに向けられる視線から逃れるように、地面を見る。やはり何か後ろ暗い、言われると困ることがあるのでしょう。

「言ってください。殺すヒントになるかもしれませんので」

「んー、そやなぁ。片や言わんといてと言う。はたまた片やは言えと言う。うちがそんな板挟みな状態になったらなぁ、契約の神として、勝負をするっちゅーのを提案するしかあらへんな!」

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