5話:破壊神きたれり

破壊神きたれり1

 朝、ものすごい轟音で目を覚まして、二階の窓から外を見ると家の前の空き地にでかいクレーターができていた。

 隕石でも落ちたのだろうか、都合よくリベルに直撃して死んでくれてはいないだろうか。こう、宇宙的な不思議パワーが不死を無効化していたりすると都合が良いのだけども。

 クレーターの中心部はまだ砂煙が濛々としていて何が落ちてきたのかがわからない。

「リィイイイイイベェエルゥウウウウウウウウウ」

 突然の豪声、音で家がビリビリと揺れましたよ。その声は砂煙の中から響いてきたようです。

 もしかして、落ちてきたのは人なのでしょうか。その声はリベルと叫んだように聞こえましたね。リベルへのお客さんでしょうか?賞金稼ぎの人にしては派手に落ちてきましたけど。

 おっと、ここでリベルが出てきましたね。

「出てきたなリベル!俺は貴様に敗れて三万年、遥か遠い異世界で修行した。そう、それもすべて、貴様をぶっ殺してこの世界を破壊しつくすために!」

 リベルを指さし、ぶっ殺す宣言。三万年前にリベルを殺そうとしたらしいですけど、失敗したって感じですね。しかし、三万年以上も生きているってなるとあれも不死者なんでしょうかね?

「君は誰だい?全く身に覚えがないんだけど」

「……!。そうだな、三万年間お前のことだけを考えて修行していた俺と違って、貴様は俺のことなど眼中になかっただろうからな」

 リベルが自分のことを覚えていなかったことに動揺したのも一瞬、すぐに持ち直して威圧感たっぷりに名乗り始める。

「俺はファボス。破壊神ファボスだ!三万年前この世界を破壊しつくすために降り立った時、貴様に敗北しこの世界を諦めざるを得なかった者だ」

 やっと砂煙が晴れて破壊神ファボスとやらの姿が明らかになりましたね。

 恐ろしく隆起した肉体に、どす黒い肌、額からは刃のように鋭い双角。おそらく人間ではなく魔族のような人ですね。魔族でも三万年生きているとは相当な長生きです。

「なるほど、ファボス。君は僕を殺しにきた、そういうことだね。理由はどうあれ、僕を殺しに来てくれたんだ。歓迎しよう。しかし僕を殺した後にこの世界を破壊してしまうっていうのはやめてくれないか。僕は死んでもかまわないから、僕だけを殺して君は帰ってくれ」

 リベルは話しながら立ち位置を変え、森を背後にする。おそらくファボスの次の行動から家を守るためだったのだろう。

「ふん、身を挺してこの世界を庇うか。いいだろう。俺の目的はもうこの世界を壊すことではない、俺のプライドを傷つけた貴様をぶち殺してやること、それだけだ!」

ファボスがそう宣言した直後、爆音とともにリベルの上半身だけが空のかなたへと消えた。

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