不死というもの4

「鎌は効かなかった」

 リベルは昼間よりもボロボロになって帰ってきた。なんでも、死神の鎌は魔物の魂を刈り取るどころかダメージを与えることすらできなかったため、やけに丈夫な柄の部分で殴り潰してきたらしい。

 一応資料に載っている死神の鎌の項を見てみると、「死神以外には使用できない」とすみっこに書いてありました。まぁ、死神以外が使うことはないですからね。仕方ないですよね。獰猛な不死者に奪われて使われでもしたら大事ですからね。ていうか、リベルは武器として「やけに頑丈な棒」でも使ってればいいんじゃないですかね。

「まぁ、依頼は達成できたってことですし、良かったじゃないですか」

「確かに、良かったのかもしれない。前に「灼熱の大槌」を借りたときのことを思えば、結果だけ見れば良かった」

 あの道具はどんな事件を起こしたんでしょう。森が火事になったとかですかね?

「あの時は隣数件巻き込んで家が火事になった。それ以降、前の死神の家の周囲には誰も家を建てなくなったんだよ」

 それでこの家の周りは妙に土地が空いてたんですね。

 それにしても前の死神の人はいったいどういう人だったんでしょうね。みんな前の死神としか言わないですし。滅茶苦茶なことをしてたらしいですけど、いまいちどういう人かはわからないですね。

「前の死神の人ってどういう感じだったんですか?」

「彼かい?そうだね、一言でいうと、とんでもない死神だったよ。本当に様々な殺し方を持っていてね。死んだ方がましって感じるぐらい恐ろしい殺し方もされた」

 死んだ方がマシって思う殺され方って何でしょうか。そのまま死んでしまえばよかったんじゃないですかね。

「ワームポッドに入れられたときは本当に死んでしまいたくなった。死ぬことはできなかったけどね」

「ワームポッドですか……」

 「ワームポッド」とは魔界の植物で、壺状になった花の中に大量の蟲やら触手がうごめいていて、入れられるとどういうことになるかはちょっとわからないですけど、拷問に使われることもあるという植物だ。

「それ、そもそも死なないんじゃないですか?」

「そう、猿ぐつわをかまされて、腕を拘束された状態で入れられてしまったから自殺もできない、丸一日過ぎたころにやっと肉体が限界を迎えて死んで、安全な場所で生き返ることができたよ」

「まじめに殺すつもりあったんですかね?」

「どうだろうか、でも、彼と過ごした80年間はすごい楽しかったよ。できたらまた会いたいんだけど、死神で定年を迎えたってことはもう、生まれ変わってしまっているんだろ?もう、会えないんだなぁ」

 リベルは珍しくとても悲しそうな顔を浮かべ、当時を思い出しているようです。

 死神をしていると人間だったときの知り合いがみんな先に死んでしまうという話をしてくれた死神の先輩も同じような顔をしていたのを思い出します。

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