第94話 幕間-理想の思惑-
「それで、どうだった? 収穫はあったかい?」
とあるビルのとあるオフィスに、男性二人と女性三人がいた。そのうち三人は先ほどまでC3と戦闘をしていたメンバー。
アウリール=ローゼンベルク。クレア=フォーサイス。シャーロット=フォーサイス。三人は
「石川司は最高でしたよ。あれはたどり着くかもしれない逸材です」
アウリールがそう言うと、長髪の男はニヤリと微笑む。
「だろうね。彼は特殊なパターンだからね。クオリアに完全に至っていないとはいえ、発現している能力は
何気なくそう尋ねるも、フォーサイス姉妹は緊張してしまう。あのまま戦闘を続けていれば、クレアはともかくシャーロットは死んでいたかもしれない。その事実を知っているからこそ、クレアはシャーロットを庇うように先に発言をする。
「七条椿は……あの異名通りでした。中学生だからといって少し侮っていました。申し訳ありません」
頭をさげる姿を見て、男はすぐにそれを制止する。
「頭を上げなよ。それは気にしちゃいない。七条椿はこちらの想定内さ……問題は、彼だよ」
シャーロットは男に支配されるような感覚に陥る。一瞬、ほんの一瞬だけ目を合わせると彼に思考を読まれてしまう。自分の葛藤まで読まれたことを悟ると、シャーロットは恐怖で震え始める。
「あ………あぁああぁ……も、申し訳ありません……わ、私は恐怖していました……そして、撤退命令が出ると安心してしまいました……ど、どんな償いでも致します……」
男が何かを言う前に自ら罰を求める。だが、そんなことは全く気にしてないとばかりに、会話を続ける。
「ふーん。まぁ、いいさ。君の気持ちと経験は視たからね。今回は罰は無しでいいよ。それに相手はあの完全到達者だ。シャーロットが遅れを取るのは仕方ない。彼に匹敵するとすれば、彼女ぐらいさ……」
その言葉と同時に、彼らの目の前に唐突に長髪の女性が現れる。それは物理的なスピードや認識阻害などの類ではない。気がついたらそこに立っていたのだ。
これには
「そうですね……彼は、七条歩は私が何とか致しましょう。不甲斐ない下の世話をするのも、上の役目ですから」
にこりと微笑む女性は優雅そのもの。一挙手一投足に気品や荘厳さが感じ取れる。
「よろしく頼むよ、詩織。第一聖剣の君にしかできないことだ」
「えぇ、お任せ下さい」
詩織と呼ばれた女性が恭しく頭を下げる。そして、彼女の容姿、言葉遣い、声音は全て……あの一ノ瀬詩織そのものだった。
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