第3話 CVAの歴史 1

 歩はいつものように日課のランニングをすませて学校へ向かい、教室に入り席に着いた。


 今日から本格的に授業が始まるので、心の奥底から興奮しており思わずほおが緩むのをとめられなかった。


 そうしていると、唐突に雪時に話しかけられる。


「おい、歩。ニヤニヤしすぎだろう。ちょっときもいぞ」


「え、まじ? でも今日から本格的に授業始まるし。今週は理論系でずっと教室だけど、楽しみじゃないの?」


「おいおい、ここにきてしかも武芸科のやつは座学なんか興味ないだろ。むしろ来週からの実践演習がメインだろ」


「そうは言うけど理論も大事じゃない? 医療工学科ほどじゃあないけど。雪時はやっぱり脳筋?」


「やっぱりってなんだよ! まぁ、健全なる精神は健全なる肉体に宿るって言うしな。とりあえず身体鍛えていればあとはなるようになるだろ」


「うわー、そのタイプの人か。でも武芸科にいる時点でそう考える人がほとんどだよね」


「そうそう、お前みたいにいちいち理論好きなやつこそこっちじゃ珍しいだろ」


「だよな〜」



 そしてしばらく時間が経過し、一限目の授業が始まる。


 今週の午前中は一般の高校生と同じように英語、数学、国語などいわゆる最低限の単位さえそろえればいい教養の授業で、午後からはCVA理論の授業である。





「じゃあ、今日は初回ということでCVAの歴史からやるぞ。じゃあ、該当ウインドウ開けー」



 午後の始めの授業は担任の高橋茜によるCVAの歴史についての授業である。


 授業は電子黒板とタブレット端末を使う。タブレット端末は昔で言うところの教科書でありノートに該当する。ちなみに全て、学校からの支給品となっている。



 


 以下、電子教科書――CVA理論―― CVAの歴史と今後の可能性より抜粋


 CVAとは、Creation Vital Armsの略称であり。2050年に偶然開発された特殊科学兵器である。しかし、当時は戦争も終戦しつつあり、一応軍事利用がメインで考えられ現代の22世紀の現在でも採用はされてはいるが、2120年現在ではスポーツ色の方が強い傾向にある。


 もちろん現在戦争がほぼないと言っても一応軍は存在しており、軍では正式に武器として採用されている。加えて扱えるものは社会的地位が高い。なぜなら、このCVAにより医学は100年は進んだとまで言われている上に、適正者は開発されて70年経った今でも、世界的にみれば少数しか存在していないからである。


 ほとんどの適正者は遺伝的なものによるところが大きいが、稀に遺伝が関係のない特殊な適正者も存在する。現在世界に存在するCVAの関連組織は軍、警察、教育機関(高校、大学)のみである。


 

 CVAというのは名の通り創造兵器 ――つまり、創造することで造られる兵器である。Vital(ヴァイタル)というのは重要かつ生命に関わってくるところから由来している。


 これは人間も含めて兵器扱いである。そのためWeapon(兵器)ではなくArms(兵器)という語を使用する。その理由は、人間の身体能力も大幅に上昇し人間とその武器を含めてArms(兵器)と呼ぶからである。



 そして、現在CVAの形態フォルムはほぼすべてのデータがそろっているといわれており、だいたいは人類が今までの歴史上で使用してきた武器がほぼ全てを占めている。その理由は、人類が今までに様々な武器を状況に応じて創ってきた遺伝子が本能的にそうさせるのだと言われている。


 武器の主な例としては、過半数以上を占めるのは打撃系やソード系。残りは、ユニーク系として分類されている。しかし、ユニーク系だから強いというものではなく、むしろハンマーやソード系の方が世界的な実力者は多い。


 加えて、創造して武器を創ると言っても本人の表面上の意識とは関係ない。無意識的な部分、つまり本能的な所からのイメージで創られるのである。これは本人の本質を表していると諸説あるが本当のところはまだ分からない。


 CVAを扱える人間は『武器創造者アームズクリエイター』通称、『創造者クリエイター』と呼ばれている。クリエイターと呼ばれ始めたのは2080年以降で現在は世界的に認知されている。


 ちなみに、クリエイター同士が本気で戦い合っても2050年から2120年までに死亡が確認されたケースはほとんどない。骨折や内蔵負傷、脳震盪のうしんとうなどはあるが、後遺症が残ったり死に至るまでのことはほとんどない。それほどまでにクリエイターはCVAにより、身体を強化された存在なのである。


 また現代の医療はかなり進歩しており、治療できない病気、怪我はないとまでいわれている。



 現在クリエイターは少し特殊なスポーツ選手程度の認知度であり、人々にとって以前に比べれば親しみ深いものとなっている。全国大会や世界大会、プロの世界なども存在し、一般の人達もそれを楽しんで観戦していたりするからである。



 

 

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