Arms Creator-アームズ・クリエイター

御子柴奈々

第1章 Commencement

第0話 校内選抜戦 本戦 第3試合



 爆発。



 全ての音をかき消し、全ての存在をもかき消すほどの爆発が生じる。



「「アアアアアアアアアアアアッ!!!!!」」



 互いに叫び声をあげながら、後方に位置している木々にぶつかることでその勢いはやっと止まる。




 吹き飛ばされた二人の男女は、なんとか立ち上がろうとするも負傷がひどいのか、中々立ち上がることができない。



 男の姿は酷いものだった。ぐちゃぐちゃの髪に、全身に付着している灼けるような赤色をした血液。さらに、両目からはどくどくと際限なく血液が流れ出てくる。



 女の方もまた、彼と同じだった。長いロングの髪だけでなく、全身が赤という赤に染められている。特に彼女の方は腕の負傷がひどく、その腕にはヒビのような跡が走っておりそこから血液が溢れ出てくる。



 さらに、特筆すべきは……二人とものだ。



 互いに赤く染まっているも、その髪は純白そのもの。また、皮膚も異常なほどに白い。先天性白皮症アルビノでもここまでの白さはあり得ない。それほどまでに異常な容姿をしていた。



 そして、二人の試合を見ている観客は何も発することができない。それほどまでに、この状況を生み出している試合は苛烈を極めていた。




「……武器創造クレアツィオーネ



 男はなんとか力を振り絞ると、能力を発動。彼の嵌めている薄いグローブから幾多ものワイヤーが出現すると、そのまま日本刀の形を作り……この世界に定着する。



 生み出された日本刀を杖のようにすると、なんとか立ち上がり、フラフラとした足取りで女の方へと向かっていく。




「ぐ……うぅぅう……」



 呻き声を出しながら、女も立ち上がる。先ほどまで彼女が持っていた三又の矛は、左右が砕けており、まるで一本の槍のようになっていた。



 彼女もまた、それを支えにして立ち上がると男の方へと覚束ない足取りで向かっていく。



華澄かすみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!!!!!!!」


あゆむううううううううううううううううううううッ!!!!!!!!!」



 先ほどまでの足取りが嘘だったかのように、互いに相手の名を叫びながら走っていく。


 地面を蹴る度にさらに血が溢れ出てくるが、もうそんなことは二人とも気に留めていなかった。いま重要なのは……目の前の相手を倒すことだけ。それ以外は瑣末な問題だ。




「はああああああああああああッ!!!!!」


 

 歩と呼ばれた男が横に日本刀を薙ぐ。そのスピードは並みの人間では捉えきれないほどのもの。


 しかし、華澄と呼ばれた女はそれを難なく矛でガードすると、そのまま相手にカウンターを叩き込む。




「倒れなさいッ!!!!!」


「そういうわけにはいかないッ!!!!!!!!」




 歩はなんと、そのカウンターを腕で受け止める。腕からはさらなる出血が生じるも、そんなことは御構い無しに華澄の腕を切りつける。



「「ぐううううううううッ!!!」」



 互いに呻き声を上げるも、止まることはない。



 剣戟はさらに勢いを増していく。ガードすらしないその攻防は、無限に続くかのように思えた。しかし、終わりは唐突にやってくる。




 キイイイィィィィィィイイインと音を立てると、上空に二人の武器が舞う。



 華澄はそれを見上げてしまった。わずかな隙だが、それを逃すほど歩は愚かではなかった。



「フッ!!!」



 肺から一気に空気を吐き出すと、なんの躊躇ためらいもなく彼女の顔面を拳で撃ち抜く。



 しかし、拳に血が付着し過ぎていたせいか、わずかに滑ってしまい意識を刈り取るまでにはいかない。



「ハッ!!!!!」



 華澄はその攻撃をなんとか受け止めると、歩の鳩尾に拳を叩き込む。




「カハッ!!!!!」




 吐血するも、屈することはない。体が動かなくなるまで、心が負けを認めるまで二人は戦い続ける。剣戟ではなく、格闘戦になっても勢いは増すばかりだ。失血死してもおかしくないというのに、動きのキレは徐々に増していく。




 そして、上空に舞った武器が二人の元へと落ちてくる。先に武器を掴んだのは……華澄の方だった。




「勝ったッ!!!!!!!」




 自らの勝利を確信すると、彼女は彼の袈裟を裂くように矛を振るい……それは見事に直撃するのだった。



「う……ああああ……あああぁぁぁ」




 致命傷だった。もうどうしようもない。彼はなんとか倒れまいと踏ん張ろうとするも、すでに体が言うことを聞かなくなっていた。



 もってあと……一撃程度だろう。




 歩は覚悟を決めるとこう呟いた。




「……ぜつ陽炎かげろう




 

 

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