第2話 アオハル到来か?



 で、そんな過酷な訓練が朝の始まりにあったものだから、その後は予想通り。

 学校の授業は大変な物になった。


 席に座って聞くだけの座学でも、眠気と披露で碌に授業内容は聞き取れない。ノートに書くために鉛筆を持つ手は上手く握れない。体育の授業なんて、ロクに動く事もできなかった。


 散々だった。


「死ぬ。死ぬ。無理だって、俺やってけない。死ぬわー」


 そう、呟きながら休み時間中は机に突っ伏す。

 他のクラスメイトの様にだべったり、予習復習したりする余裕は当然なかった。

 これからもこんな日々が続くのかと思うと、気分が滅入りそうだ。


「誰か助けてー、なんつってな」


 自分の問題だし、自分で何とかするしかないのは分かっていても、他力本願な事を思わずにはいられない。


 便利な未来のロボットとかやって来て、筋肉増量ドリンクとか、才能溢れるアイテムとかくれたりしないだろうか、とそんな具合に。


 そんな風に典型的な駄目人間、絵に描いたような怠惰人間みたいな考え方をしていたのだが、その俺にまさか人が話しかけてくるとは思えなかった。


「あの、何かお困りですか」

「ふひぇ!」


 驚きのあまり変な声が出てしまった。

 これが野郎が言葉をかけてきたと言うのなら、まだ取り繕えたところだったのだが、生憎とそうじゃない。


 ばか、生憎とそうじゃねぇんだぞ。しっかりしろ、可愛い女の子がいるじゃねぇか。


 これ何の現象?


 うちのクラスの子ではない。

 顔はどこかで見た事があるような気はするのだが。


「なななん、何の用でしょうか!」


 とりあえず盛大にどもりながら、起き上がって顔を相手へ向ける。

 めっちゃキモイ。

 やばい三次元の女の子と喋りなれてないキモオタみたいだ。


 本当にそんな奴いるのか、どうかしらんけど、それみたい。もちろん普通のオタクにはごめんなさいだけど。


 今の俺、うわーどうしよ。絶対こいつ、きもっとか思われてるよー。


「さっきの授業うわの空だったみたいだから、良かったら、ノーとコピーしてきたので。どうぞ」

「え?」


 だが、予想とは違うセリフと行動に俺は思わず固まってしまう。

 今、なんて?


「この間の事は、その……、助けてくれて。あ、ありがとうございました。その、それと逃げちゃってごめんなさい」

「え、あ、ちょ……」


 身をひるがえして、教室から出ていく女の子。

 呼び止めようとするが、その声はちゃんとしたものにはならなかった。

 混乱した時の人間の反応の、まさにそれ。テンプレートみたいな台詞しか言葉にできなかったのだ。


 今、何が起こった?

 リアル女の子に親切されるなんて、これ夢じゃないの?


 そんな事すんの、水菜くらいのものだと思ってたのに。


「おーい、君はどこの誰さんなんだよー」


 聞こえないだろうが、そう尋ねずにはいられない。

 名前すら聞く事が出来なかった子だが、どこかで見た事があるのがひっかかるところだった。


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