森の泉

 二人のおすすめのルピス料理を食べてから、とりあえず紅いオーラを纏ったモンスターについて作戦会議をしていた。

「とりあえずだ、相手の強さがわからないと無闇に攻撃できないな」

「ユキもそう思うニャー」

「そこで、サリナ相手の情報とかないか?」

「はいマスター。モンスターはオークと判明しております」

「オーク?」

「巨大な豚のモンスターですマスター」

「相手の武器はわからない?」

 やはり、攻撃が遠距離か近距離かで対応も全然ちがうものになってくる。

「他の天使達からの情報ですと、アックスを使ってくるらしいです。攻撃力と守備力が高めですが、魔法耐性はほぼ皆無と言っておりました」

「そうなると、サリナの魔法が効果的ってことか」

「あっ、マスター。言い忘れていましたが、私たちサポートの天使が倒してしまいますと、倒したと認められず、記憶は戻りません」

 な、なんだってー!?

 がっくりとうなだれてしまった。

「そ、それは、サリナ殿。僕たち雑魚だけで戦えと?」

「いえ、そうではなくですね、トドメの一撃はマスター達がしないと、記憶が戻らないのです」

「じゃあそこまでは、サリナに頼ってもいいの?」

「はい。しかし問題があります」

「えっ?どんな?」

 完全に安心していた僕は、どこに問題があるのかわからない。

「相手の体力がどれぐらい残っているのかわからないのですマスター」

 確かに。ぎりぎりまでサリナに攻撃してもらおうと考えていたが、相手の体力の限界がわからない。

「完全に詰んだ」

 ガクッ。ど音が鳴りそうなほどへこんでしまった。

「マスター、ユキにいい作戦があるニャ」

 ものすごく元気な声で、ユキが手を挙げている。

「ユキどんな作戦だ?」

 飛び跳ねて答えてくれた。

「まず、サリナに全力で魔法攻撃をしてもらうニャ」

「うん、それで?」

「多分それで、相手の体力はほとんどなくなるはずニャ。後はユキとマスターでフルボッコするニャ」

 こんな可愛い女の子がフルボッコって...

「でもいい作戦だな。それで行こう」

「それで、サリナ相手はどこにいるかわかるか?」

「ここから少し離れた森の中の泉にいると聞いておりますマスター」

 今回の戦いは森の中か。

「わかった、そこに案内してくれ」


 トンネルを抜けたら泉だった。じゃなくて、数時間歩いて泉の前まで来れた。

「あれがモンスターか」

 僕は少し怖かった。紅いモンスターの強そうな姿に。

「サリナ、あれがボス的なヤツ?」

「そうですマスター」

 どうしようか、とりあえずここから奇襲するか。

「ユキ、準備は出来てるか?」

「もちろん。ばっちりだニャ」

「それじゃあ、僕のgoサインでサリナが魔法攻撃して、僕とユキで一気に攻撃するよ」

「サリナ、魔法準備して」

「かしこまりました。マスター」

 サリナが白い塊を手の中に出現させた。

「よし、go。一気に決めるぞ」

 僕の声掛けとともに、サリナが魔法を放ち、僕達が飛び出した。

 サリナの魔法が直撃して、あたりが白く光った。


「本当にすいませんマスター」

「いや、気にしなくていいよ」

「そうニャ、サリナは悪くないニャ」

 戦闘を終え、何分経ったかわからないが、未だにサリナが謝ってくる。

 戦闘は僕達は誰もダメージ受けることなく、完勝したのだが。

 作戦では、奇襲でサリナが魔法で攻撃してから、僕達で倒す予定だった。

 しかし現実は、サリナの魔法で一撃で倒せてしまい、僕達は一撃も入れてないし、記憶も戻らなかった。

「気にするなって、良くある事だよ」

「いえ、これではサポートの意味がありません。こうなっては、私はもう首を」

「まてまてまて、僕達はサリナのおかげでここまで来ることができたんだから。サリナがいないとダメだよ」

「マスター、ありがとうございます」

 サリナが涙を流しながら言ってくれた。

 でもこれからどうしようかな?

 記憶が戻らなかった問題の解決はしなかった。

「それなら任せてくださいマスター」

 涙を拭い、いつの間にかサリナがそばにいた。

てか心を読むなよ。

「先程の街の近くに新たなオーラを纏ったモンスターが出現したとの情報を得ましたので、そちらに向かいましょう」

 さっきの街の近くか、これは好都合だな。

「じゃあ、さっきの街に戻ろうか」

「でも、ユキどこから来たかわからないニャ」

「えっ、サリナ覚えてる?」

「すみませんが、私も覚えておりません」

 そして、僕も来た道がわからない。

 またしてもやっちまったー!

「もしかしてマスターも、わからないのかニャ?」

 無言の肯定。

「ニャンだってー?ユキたちここで迷子ニャー」

 やってしまったな。

 帰れないし、そろそろ辺りも暗くなってきている。

 このまま迷うのは危険だな。

「よし、よく聞けよ。ここをキャンプ地とする」

「やったニャー。キャンプニャー」

 なんだか喜んでいるのだが、とりあえず明日の朝に帰る方法を考えるか。

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