登場人物たちそれぞれの、かけがえのない一年間が、堅実な文章と構成でつづられています。誰もが運命に翻弄され、明日をなくしてしまった姿がかなしいです。登場人物たちが過去で待つなくした明日を見つけるとき、彼らの未来が光にみちたものであることをいのらずにはいられませんでした。
山本さん、りょうくん、そして佐藤先生。三人がそれぞれに抱える欠落が、読み進めるほどに明らかになっていきます。そして最後まで読み通して胸の中に残ったのは、なおも消えることのない大きな欠落でした。なくしてしまった大切なものは、別のものでは決して替わりにはならない。そうハッと気付かされる、胸を突くような読後感でした。
先生に一途な主人公美波が、不吉な噂のある図書室の図書委員になる所から話は転がっていく。それぞれのキャラクターにも何か背景がありそうで、興味深く拝読させて頂いた。文章も読みやすく、続きが気になる作品だ。