Yesterday
@HaruIchi
作戦開始
僕は溜息をついた。どうしてこうもやる気の無い言葉を言えるのだろう。僕は不思議で仕方が無い。
「本気で言ってるんですか?」
もちろん彼は本気だ。しかし彼が「冗談だ」と言う万に一つの可能性に僕はすがりたかった。当然のことながら、僕のかすかな期待は一言で裏切られる。
「本気だよーん。」
間延びした口調。人をからかっているかのような言葉の使い方。性格だから仕方が無いとは言え……僕は頭を抱えた。これではいつまで経っても仕事がはかどらない。
「だってさあ。ピート君。あせったってうまくいかないよぉ。」
目の前の人物が僕に言った。
「そうは言っても、先輩……」
僕は目の前の人物に異を唱える。彼の名前はシェル。僕の仕事の先輩だ。
「少し様子を見ようなんて、どうかしてますよ。僕にはそれほど難しい事例には思えません。ここは、もっと積極的な手を打つべきではないでしょうか。」
僕の精一杯の反論に、先輩はウームと考え出した。
「確かにそうなんだけどねぇ。」
お?悩んでいるぞ。もしかしたらやる気を出してくれるかもしれない。僕はかすかに、そんな期待を抱いた。が、
「でもさ、めんどくさいじゃん。」
先輩はヘラッと笑う。僕は目の前が真っ暗になったかのような錯覚を覚えた。めんどくさいとは……信じられない。僕は小さい頃からこの仕事に就く人を尊敬し、自分がこの仕事をすることに決まった時は、自分自身を誇りに思ったものだ。だから仕事場の先輩から「めんどくさい」などと言う言葉は聞きたくなかった。やり方しだいで、他人の人生を大きく変えてしまうような、重要な仕事であるのに。
「もういいです。僕は勝手にやらせてもらいます。先輩はのんびりと傍観していたらいいです。」
僕は突き放すように言った。すると、さすがに先輩も反省したのか、「ボクもがんばるよ」と……言うはずもなかった。先輩はにっこりと笑って、僕に手を振った。
「がんばれぇ。」
まったく、救いようの無い男だ!僕は先輩を後ろに残し、ターゲットとなる人物に近づいて行った。こうなったら、一人でも任務を達成させるつもりだった。学校であれだけ仕事のやり方、理論、過去の事例等を勉強してきたのだ。僕には一人でもなんとかする自信があった。
僕たちの職業は「キューピッド」。仕事は天界からの指令通りに人間の男性と女性をカップルにすること。いや、僕たちと言ったが、訂正させともらおう。キューピッドは僕だけだ。先輩はキューピッドなんかじゃない。
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