俺は何回でも君に恋をする
猫城
第一章
1-1
「ねぇ…私さ…この間学校のカウンセリングでさ…心の傷のせいで記憶障害があるって言われたんだ…。もしかしたらそのうち家族のことも…自分のことも…名前とかも忘れてしまうって言われたんだ…。」
以前からそう言った可能性が無いわけではないということは知っていた。ただ…俺は子供みたいに希望を持ってしまった。もしかしたら…忘れないかもしれない、と…。
「家族にも話しなさいって言われた…。だけど…話すのが怖いよ…。」
「大丈夫、大丈夫だよ。」
俺は彼女に対してこれしか言ってやることが出来なかった。
「やだな…もっと酷くなったら…全部忘れちゃうんだろうな…彼方のことも…もしかしたら…怖い…」
「大丈夫だよ、もし忘れてしまっても俺は何回でも遥香のこと好きになるよ」
「そっか…ありがと…」
俺は記憶が無くなる感覚がわからなかった…。ただ…今まで当たり前に呼んでもらえていた名前がもしかしたら呼んでもらえなくなるかもしれない…。俺はその現実を見たくなかった。
「ねぇ…私…今日何してたんだっけ…?」
「遥香は今日はバイトしてたよ。」
「そうなんだ…アハハ…」
彼女の記憶は圧倒的に、そして急速に消えていっている。俺はそれを実感した。
(なんで遥香がこんなに傷つかなくちゃいけないんだよ…なんでこんなに世界は理不尽なんだよ…なんで神様はこんなに不平等なんだよ…)
俺は居るかもわからない神様を恨んだ。
「もしかして俺のことも忘れかけてるか…?」
「ううん、大丈夫だよ…彼方彼方彼方彼方大好き…」
「うん、大好きだ…」
彼女が俺の名前を何回も呼んだのを聴いて俺は彼女が忘れたくないと思っていることを痛いほど感じた。
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