第4章 光が集まるところ
程なくして一行はその場所に到着した。予想以上に開けた場所だった。
いや、「もの凄く開けたところ」、だ。
先ほど、ここが見渡せる高台から全景を見たが、本当に「光の渦」という感じだった。なぜにここだけぽっかりとこうなっているのか、見当も付かない。これだけ目立つ場所なのに、ギルド公認のマップに書かれていないのは明らかにおかしい。
程なくして入り口らしき所に到着した。そこにはネオンサインがギラギラと輝く派手で大きな看板があった。そこには、
「おいでませ!、ギャンブルの街、ラースへ!」
と書いてあったので、ラースと呼ばれている街、ということはわかった。旅慣れした奴なら、おいそれと近づかない様な、どうみても胡散臭い所だった。しかし、それがわかっているにもかかわらず、俺らは吸い込まれるように「光の渦」の中に入ってしまった。
特に検問もなく、ゲートキーパーもいなかった。俺はともかく、なんで、他の連中がすんなりと街に入ってしまったのかが不思議でならなかった。
そこで、理由をそれとなく訊いてみることにした。
ジン「クールで通っているあんたが、こんないかにもな所に一緒に入っていくとは。珍しいな。やっぱり金か?」
アイル「失敬な!! おまえと一緒にするな! 別に私はギャンブルが目的で入ったのではない。ただ・・、近づいたときに、あいつが呼んでいる様な気がしたんだ。いや、確かに聞いた。あいつの声を」
ジン「あいつって、誰だよ」
アイル「そこまでおまえにしゃべる義務はない」
ジン「へいへい」
ジン「ドクター、あんたはどうなんだい?」
ドクター「まあ、正直な所、金のこともある。そこら辺はアイルと違うんだがな」
ジン「お! 正直だねえ、そういうところがあんたのいいとこなんだよなあ」
ドクター「ただ・・・」
ジン「え! まだなんかあるんかい?」
ドクター「いや、何でもない。思い違いだ。まあ、宿もありそうだし、たまには息抜きにこういうのも良いだろう」
ジン「そうそう!」
クレス「いっとくけど、私はアイル側よ! 理由もちょっと似てる・・・」
ジン「・・・もしかして、例のお姉さん、えーっと、フォルテさんだったっけ?」
クレス「そう。お姉ちゃんの声がした、感じだった。アイルほど、はっきりと断言出来ないんだけど。でも、可能性があるなら、いざ!チャレンジよ!」
ジン「前向きで大変よろしい!」
クレス「あんたは前向きすぎなの! そう言っているあんたは、どうせ・・・」
ジン「そう! 俺は、もうひたすら純粋に、儲けるぞぉ! ってな感じで・・・」
クレス「言わなくてもわ・か・る! それも「純粋」じゃないじゃない! 至って不純な動機です!」
ジン「ストレートでいいじゃん!」
クレス「ストレートすぎ!・・・・ あ、そういう意味では、大変よろしい!」
ジン「よけいなお世話じゃ!」
ジン(ったく、女に弱い訳じゃねえ、と思ってるんだけどなあ。どーもクレスには歯が立たねえ・・・まあ、いいや、それぞれ理由はなんであれ、はいっちまったんだから、たっぷりとあそばなーいかん! 宿へのチェックインは遅くなると思うが、給金も入ったばかりだし、ここは一つ)
ジン「一発儲けるぞ!!!!」
他一同「あんた、それしかないんかい!」
さてさて、一行は街の中のネオンサインがギラギラしている通りを歩いていた。本当にギャンブルの街なんだ、と改めて感心してしまった。程なくして、中央広場らしきところに出た。中央にマップが設置されてあった。その大きめのマップを見て、一行はそれぞれ行きたい場所に向かうことになった。
アイル:「俺は静かに酒が飲みたい。この・・・、そう、ここのキッチンの方へ向かうことにする」
ドクター「俺は・・・そうだな、ここらへんを見物しながら、気が向いたらどっかのカジノへ行くことにする」
クレス「私はお姉ちゃんが行きそうなカジノを調べます」
俺はクレスとは違うカジノへ行くと告げて、各自バラバラになった。
時間と集合場所は決めてある、「午前2時に入り口のあのでかい看板の前」だ。あの看板と見間違う様な看板は、他にはさすがに無かったからだ。実にわかりやすい。
ところで、俺だが、初志貫徹で一番大きなカジノへ直行することにした。ちなみにそのカジノの説明には、
「女性ディーラーだけのカジノ」
と、書いてあったのを皆には内緒で確認したつもりだった、が、どうやらクレスだけが変な目で俺を見ていたので、彼女だけには悟れていたのかもしれない。まあ、些細なことだ。気にするのもやめた。それにしても、この街、本当にどこの施設にもゲートキーパーがいない。もしいたら、クレスなんて、カジノでご用、即、補導だろうな。
ジン「ま、いないんだからいいか。さ~! 楽しむぞ!」
そう叫んで、他のメンバーとは間をおいて、そのカジノへと走っていった。
誰もその場にいなくなった頃、マップは立体的にぐにゃりと変形し、小柄の人間型になった。その人物は不気味にこうつぶやいた。
???「龍神 仁、ご一行様、ごあんな~い!」
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