アリアンロッド2E the Amber

三色

prologue 

 琥珀に輝く結晶体クリスタルは、その光を増す。

「ちょちょちょ、眩しい!眩しいから!?」

 当然、チェルナの文句に応えるはずもなく、結晶体クリスタルは更に光を増幅する。

「――声、が…?」

 そして、光は辺りを白く包み込んだ。



     ―其の力、邪なる者を討ち



       また撃ち貫くもの



    ―“我ら”は破滅への運命へと刃向うが為



       この力を鋳造せし者




 地下の小さな部屋は光に包まれ、無限遠の白い空間へ変貌した。


 そして聞こえてくるのは、こえ



     其れは「粛清ほろび」に立ち向かう力


其れは「運命さだめ」に抗うための力


             其れは「神の摂理きめごと」に刃向う力



 


 性別も、年齢も、全てが曖昧ないのり。 


 だけど、ただ直向きに何かを願うのぞみ



             ―だが―



 さけびは一転する。




   我らの時代に其れは叶わず―


      後は滅びを待つばかりとなった



 落胆、諦観、絶望……全てが綯交ぜになった暗いことば



    ―これを見つけし勇敢なる者よ



 「―え」

 アメノはどこからか視線を感じた。白い闇に染まった空間で、アインも、チェルナも、レンリさえも見えない空間でだ。



 此の力、我らの願いを預けたい 



 「願いを、預ける…」

 


          ――我らはこの力



   「イマ」を生き行く人々のために振るわれること、切に願う



     ――だからどうか、あの剣を止めてほしい―――



 光が更に増幅される。そして―


 ―パキィィン! 


 結晶体クリスタルが割れる音が、響き渡った。

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