死体のある風景

丘野 境界

第1話 眠れる美少女

 不倫の果ての自殺だと聞いた。


 ベッドの上に横たわる女性は、まるで眠っているかのようだった。

 茶色のショートカット、年齢は二十代前半……と報告では聞いていたが、まだ高校生でも通用しそうなだった。

 それに美人だ。

 化粧っ気はないが端整な顔立ちをしている。

 まあ、睡眠薬で自殺するのに、化粧は必要ないか。

 いやいや、昨今の女性なら分からないぞ。

 ……とはいえ、とにかくちょっとこの死体には不自然な点がある。

 まず、ホテルの一室だというのに、その場に不釣り合いな紺色の繋ぎを来ている。とても政治家の愛人には見えない。

 そして、睡眠薬自殺にしては、近くにクスリがない。

 うむむ、これは一体どういう事か。

 などと狭山さやま警部が唸っていると、顔馴染みの中年鑑識官である藤井寺ふじいでらがユニットバスから出てきた。

 無精ひげを撫でながら、申し訳なさそうに頭を下げる。


「すみません、そいつうちの新人の和泉いずみです。初仕事で真っ赤な風呂見て気絶しちまったんですよ。あ、死体は風呂場で手首切ってます」

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