「若葉」という言葉が出てこない

 ある春の日、道を歩いているとなんだかわからない不快感があった。どこもかしこもきらきらしていて、自分の居場所がないような気がしていた。

 昼下がりに外に出ると、民家の庭に植えられた草木が生き生きとしていて、葉っぱが太陽の光を余すとこなく浴びられるように力一杯広がって、日光を反射しているように見えた。

 黄緑というほどではないけど、柔らかそうで少し黄色味かかっていて、日光をきらきら跳ね返してやたらと目に飛び込んでくるそんな葉っぱにも、ちゃんとした名前があるって気付いた時にはもうその季節は終わっていた。

夏が近づいてきて、芯がしっかりして全力で光合成してますって感じの深緑色の葉っぱには頼りがいを感じて、頑張ろうって気にさせられた。

 そのうっとおしいなって思ってた春の葉っぱにも名前があった。「若葉」だ。そんな単純明快な名前があったのかって、気付いた時は拍子抜けした。それから嫌悪の理由もわかった。

 私は若い。まだまだ新芽が少し開いたくらいの「若葉」と同じで、生命力に溢れているはずなのに、その生命力を宿してくれる日光が私にはなかったのだ。

 明るい未来が想像できなかったのだ。

 だから、ある程度育って、自分の力で生きているのを感じさせる深緑には、身を預けたいという思いがあったのかもしれない。

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