モノローグ

矢口晃

第1話 集団を乗せてバス発つ枯野かな

まだ私が十代の学生だった頃、後に師となる中原道夫に一度まみえたことがある。一九九九年の夏、中原道夫の指導句会に出席した時のことだ。その頃はまだ、師弟の関係についてそれほど重い認識を持っていなかった私は、有名人に会いに行くくらいの軽い気持ちで会に飛び入り参加した。その時にはすでに、藤田湘子の門下に入っていたにも関わらず。句会の後の酒の席で、私は悪気もなくそのことを中原道夫に打ち明けた。なんだ、と笑いながら私の頭を掌で軽くはたいた中原道夫だったが、その目に些かの怒気を含んでいたのを私は感じた。

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