僕っ子とオネエ妖怪
よもつひらさか
第1話 僕っ子だって、恋するもん。
僕は竹中みなみ。
一応女子高生。僕には兄弟が居て、上に二人の兄、下に一人の弟、
計4人の中で唯一の女の子。
でも、全員が自分のことを僕というから、自然と僕も一人称は「僕」となった。
親は割とおおらかな親で、別にそのことで咎められたり矯正されることもなかったので、僕はいまだに僕であり良い友達にも恵まれ、そのことでからかわれたりすることはなかった。
髪の毛も、兄弟と僕4人が並べられて、一気にお風呂場で散髪されてたりして、常にショートカットだった。だから僕はよく男の子と間違われたのだ。 中学の時など、見知らぬ女の子から告白されたこともあった。
僕は現在高校2年生。今、僕は恋をしている。もちろん相手は男の子だ。
彼の名前は、浅野 翼。同級生だ。きっかけは、仲の良い友人たちと川原でのBBQで僕が川で溺れかけたのを助けてもらった時だ。
僕は幸い大事には至らなかった。その時、初めてお姫様だっこというものを、体験したのだ。翼はどちらかというと、軽いタイプで、僕はそれまではちょっと軽蔑していた。女の子と見れば、誰でも声をかけてちやほやする。
その日も、一緒にBBQに行ってた、
いつもチャラい翼が真剣な顔で僕をお姫様だっこして
「おい、みなみ、大丈夫か?」
と心底心配そうに言った時に、僕は恋に落ちてしまったのだ。それまで僕は、翼のことなんて何とも思っていなかったのに、今ではいちいち翼が何か言うたびにドキドキしちゃうのだ。
「オッス、みなみ!」
後ろから、バンと背中を叩かれ、振り向くと翼が満面の笑みで立っていた。 僕の心臓はバクバクし、体温は急上昇した。
「何赤い顔してんだ?熱でもあんのか?」
翼は僕におでこをくっつけてきた。わー、そんなことしたら、僕の心臓、壊れちゃうよ。 翼の顔がこんな近くに。
「やめてよ、もう。顔近いよ!」
「わりーわりー。そりゃそうと、俺、昨日新しいゲーム買ったんだ。 今日、俺んちで一緒にやらねえ?」
翼がそう誘ってきた。 僕は舞い上がってしまった。
「う、うん。行く。」
僕は答えた。
「よっしゃ、決まり~。じゃあ
そう言うと、翼は携帯を取り出して、二人に連絡を取り始めた。
なんだ、二人っきりじゃないんだ。
何を期待してたんだろう、僕は。
「んじゃ、あとでなー。着替えてこいよー。」
そう言うと翼は自宅のほうへと走って帰って行った。その日、翼のうちで、新作のゲームをして、夕方日が暮れてから日向子と一緒に歩いて自宅へ帰った。 日向子の自宅との分かれ道で、日向子に手を振り、別れた。 女の子の一人歩きは危ないけれど、今のところ僕はあまり女の子に見えないので、そういう危うい目に遭ったことがない。
だけど、僕はその日初めて、痴漢に遭う事になった。 後ろから僕に近づいているのに気付かず、そいつはいきなり僕に抱きついて、首筋を舐めたのだ。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
今までに無いような甲高い悲鳴が出た。振り向くとそこには、驚愕の表情を浮かべた20代後半くらいの背の高い痩身のオカマが立っていたのだ。
「何よ、アンタ。女の子なの?」
そう言うと、オカマは汚らわしいそうに、自分の舌をハンカチでぬぐい始めた。
「オ、オカマの変態!」
僕は叫んだ。
「し、失礼な子ね!オカマの変態って何よ!最近はね、私のようなのをオネエって言うのよ!アンタ、紛らわしい風体してんじゃないわよ。かわいい僕ちゃんだと思ったのに!」
僕はそう罵られて頭にきた。
「痴漢が偉そうに何だよ!警察呼ぶからね!」
僕はそう言い、携帯を取り出した。
オカマはニヤニヤしながら言った。
「どうぞどうぞ、お呼びなさい。私は絶対に捕まらないから。」
「そんなわけないじゃん。逃げようったってそうは行かないんだから。」
僕は携帯のカメラを向け、写真を撮った。そして、僕は携帯を見て愕然とする。
確かに写したはずのそこには、何も写ってないのだ。
「警察に行っても、私はつかまらないわ。だって、人間じゃないんだもの。」
オカマは真っ赤な口紅にタバコを咥え、吹かしだした。
「女には興味ないわ。」
そう言うと、僕の顔にふうっと煙を吹きかけた。
「人間じゃないのなら何なの?」
僕はゴホゴホとむせながら言った。
「うーん、人間より、より進化したもの?私は美少年の垢だけを舐めて生きていけるんだから。エコでしょ?」
僕は頭がおかしくなりそうだった。
「ってことは、妖怪?・・・!そうか、垢舐め!」
「まあ人間からはそんな不本意な名前で呼ばれてるわね。 言っとくけど、私が舐めるのは、美少年の垢だけだからね。そこいらの垢舐めと、一緒にしないでね。」
オネエ妖怪、垢舐め。
冗談でしょ?
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