第30章 喫茶店『望名』
(某月某日 午前7:00 地下街アラヤド地上1F)
赤穂が倒された後、地上1Fまでは、誰もいなかった。客と店員含め一般市民はガーディアンフェザーの避難誘導員により全員地上に避難して、車両により所定の場所に移動してしまっていたからだ。
黒崎により殲滅された対テロリストガンナーはあれで全員であり、ガーディアンフェザーから期待されて出動した赤穂までやられてしまったので、ある意味、ガーディアンフェザーとしても、すぐに動員できるメンツが用意出来なかったようなのだ。
避難誘導員は戦闘部隊と違うため、誘導以外にまわる事が出来ず、数名の警護のための一般ガンナーが入り口を固めていただけだった。
当然、ココを良く知らないだろう希達が地上出入り口のココを通らないと、出られないと、対外的に言わざるを得ないための、やむなしの準備だった。
が、当然それは見当違いの作戦である事は知ってのことだった。希側には蛭子も黒崎もいるのである。ガーディアンフェザー側も、正直それはわかっている事だったが、まさか、“そのテロリストと告知した中に、身内がいる”など、説明するわけにもいかず、また、それをにおわせるような措置を執るわけにもいかないので、
『2手先の準備』
をする事に変更したのである。彼らの“次の目的地”に駒を置いたのだ。
***
黒崎「さて、赤穂撃破以降、正直、誰もいなくて助かった。さっさと地下街を抜けて地上1Fまで到達だ」
リキュール「ガーディアンフェザーの連中、よほど赤穂に自信があったんだねー、ざーーーーんねん!」
スイート「いや、正直、徹夜でここまで来たわけで、夜遅くまでのバー営業で慣れているとはいえ、正直、きついな」
テンニャン「どこかで休憩出来るなら、一休み入れた方がいいアルね…」
蛭子「出来るなら、ガーディアンフェザーの息がかかっていない場所が好ましい」
そこで希が切り出した。
希「なら、次の目的地の、『俺の店』で、珈琲をご馳走するよ。他にも軽食程度なら作れる」
リキュール「でもさ、そこって、今は、マスターの“ver2.0”がいるところ何でしょ?」
希は自信を持って、こう答えた。
希「追い出す。『望名』は俺の店だ」
***
一行は黒崎と蛭子の案内で、客が使い、ガーディアンフェザーの警護ガンナーが待っている“地上出入り口”、を、使わず、店員や関係者が使う“従業員用の勝手口”を使うため、用心して、一度B1Fに降りて、階段で“その勝手口”近くに出る階段を上って1Fに戻り、そして、そのドアの前に到着した。
(某月某日 午前7:15 地下街アラヤド勝手口前)
黒崎はほんの少しだけ勝手口を開け、蛭子に疾風銃『シナトベル』の弾丸能力“空間把握能力”を指示した。
パシュ!
蛭子「・・・・・・・・誰もいない。どうやらあの撃破した対テロリストチームと、ガンナー、避難誘導員、警護が全員で、手持ちの駒をこっちに避けなかった・・・・・のか?」
黒崎「…そうとも考えられるが、その先を読まれているとも言える。配置した駒は、ここではなく・・・・・・」
希は正直、嫌な顔をした。
希「・・・・・俺の店、か・・・・・・・」
リキュール「あーあ、珈琲と軽食はお預けかぁ~」
だが、希はニヤっと笑った。
希「ver.2.0だろうが、他の連中だろうが、俺の店にこれ以上、土足で上がらせない! どかすまでだ!」
***
(某月某日 午前7:45 喫茶店『望名(ぼうな)』前)
『CLOSE』
スイート「ま、当然だろうな。それに中には間違いなく、ガンナーが待っている」
希「黒崎、待っているガンナー、ver.2.0だと思うか?」
黒崎「希突起人類の遺伝子を持っている彼を、今ココで駒で使うのはもったいないと思うだろうな。他のガンナーは“希の地の利”で不利だから、これもダメだ」
リキュール「? あれ? じゃあ、誰なら“有利”なの?」
正直、希にもわからなかった。軍隊で入れる程、店内は広くない。ホールを知っている店員も少ないし、客は考えられないだろう。
なら、一体、中で待っているだろうガンナーは誰なんだ?
希「とりあえず、“従業員用勝手口”から、バックヤードに侵入しよう」
スイート「鍵は?」
希はフンっと鼻息を1回吐いて、横にある店用のポストを開けた。
カラン
中には鍵が1つ残っていた。
希「従業員しか知らない隠し場所だ♪」
こうして希の案内で、横の狭い路地を通り、途中にある裏口の“従業員用勝手口”の前に来て、そして希がそーーーーっと、鍵を開けた。内鍵はされてなかった。
カチッ
希「外鍵だけ施錠。この鍵は従業員しか場所を知らない。つまり・・・・・」
希は静かにドアを少しだけ開けた。
ガチャ
黒崎「蛭子、頼む」
蛭子「了解」
パシュ!
蛭子「・・・・・・一人だけいる。性別は不明」
希「一人? なら、可能性は、“あの二人”しかないはず。だが、何故だ?」
向こうからの攻撃意思もないので、待っていても仕方ないから、全員、限界突破させずに銃を構えながら、静かに店内に入った。希の言った通り、最初のエリアはバックヤードだった。
希「バックヤードは・・・・静か。誰もいない。だが、店内も荒れてないから、今でも使われているということだ。ある意味安心したよ」
蛭子はホールへのドアから少し銃口を出して、一発撃って、空間把握する事にした。
パシュ!
蛭子「・・・・ホールに一人いる。性別不明。だが、金属からの反射風を感じる。間違いなく、ガンナーよ」
希は、二つの可能性に揺れていた。
ver2.0ならやむなしだ。俺ですらガンナーなのだから。だが、『もう一つの可能性』が、どうにも信じられないのだ。
希(もう1つの可能性だったら…、何故“彼女”がガンナーなんだ?)
全員、ゆっくりとホールに進んでいった。ホールの中央にいたのは、ウェイトレス一人だけだった。
希「み・・・美佳・・・・・・・・何故・・・・キミが・・・・ガンナー・・・・・・」
美佳「お久しぶりですね、お待ちしておりました。それでは営業を開始しましょうか? 今日のランチは、ブラッディトマトピザよ?」
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