第28章 撃破されたガンナーの役割

 その店内は閉鎖空間であり、更に各弾丸の着弾地点から広がっていった、各色の“宝石の鉄格子”が、更に移動エリアを狭くし、正直、希達にとっても、赤穂にとっても、“銃撃に向かない空間“、となったはずだった。だが、赤穂は自信満々だったのだ。どうやら、彼のデイライトガン”ジュエルジェイル“の秘密は、この”宝石の鉄格子”だけではないらしい事は、彼の言葉からも理解できたのだった。


 『宝石の鉄格子』と、『銃撃』


 ここからわかる彼の“銃撃方法”、それは、希がよく知っている方法だった。


 “跳弾”


 牢獄は束縛の意味だけではなく、赤穂にとって有利な“弾丸の軌跡”を作る為の“反射板”なのだった。


赤穂「さーて、誰から片付けるかなぁ? あ、言っておくが、俺は与一のように甘くは無い。一発目から眉間を狙う。さっさと片付けて、ラボに帰ってアイスが食べたいのでな」

スイート「…どういうアイスが好みだ?」

赤穂「あ゛~? それ聞いて、何がしたいんだよ?」

スイート「単に興味があるだけだ。敵味方問わず、甘味好きの意見は聞きたい物だ」

赤穂「はっ、イケメンのくせに変な奴! まぁ、いい。俺の好きなアイスは、チョコレートアイスだ。これで良いか?」


 スイートは顔つきを変えずに頷いて礼を言った。


スイート「良い趣味だ。教えてくれてありがとう」

赤穂「変な奴。まぁいい。同じ甘味好きとして、お前は最後にしてやる。あと、やられた与一の細胞分析から、旧式、お前の弾丸“も”跳弾が得意なのを、ラボから知らされている」

蛭子「ちょ、ちょっと待て! 私らデイライトエリアのガンナーがやられた場合、確かにあの状態になるが、その“光の粒”の行き先は、ガーディアンフェザーの蘇生センターのはずだ! しかもその情報は秘匿されており、それ以外の管轄所属のお前らが軽々しく情報を入手できないはず!」


 赤穂はクスクス笑った。


赤穂「蛭子よぉ~、それはな、お前らの仲間のおっさんが火野を倒した時から変わったんだよ、事態が変わっちまったんだよ。ガーディアンフェザーの上層部が“OK”出しちまったんだな、“個体の持っている情報の開示”をな。これまでお前らとエンカウントしてやられたこっち側のガンナー、少なくても蘇生途中の火野と、蘇生準備中の与一、この二人については、ある意味“捨て石”なんだよ。俺ら“改造組”の情報源、戦闘を有利にするためだけの存在、“やられたガンナーの価値”、それはこの程度に成り下がった、そういうわけだわ。蛭子、おまえもやられたら、こうなる予定だったわけだわ。ご愁傷様~」


 蛭子と黒崎は、怒りでわなわなしていた。ガーディアンフェザーの上層部は、そこまで落ちぶれてしまったのか、と。


 少なくてもガンナーにも命の尊厳くらいはある。やられても光の粒に変わり、蘇生センターで再構成して生き返ることが出来る権利が最低限あったのだ。それすらガンナーから取り上げられてしまったら、“ガンナーの存在意義”は、今現在は、こいつの言うとおり、“単なるエンカウント情報の入手元”に過ぎなくなってしまったのだろう。


 そんなのは、例えガーディアンフェザーであろうが、ムーンライトエリアだろうが、デイライトエリアだろうが、銃を持たない“ダークネス”だろうが、断じてあってはならない事だ。


***


 だが、そういう“身内繋がり”の二人の怒りの反応とは正反対に、スイートを起点にして、スイート、希、リキュール、テンニャンの4人と、パンドリオンを含めた5人は、ムーンライトエリア専用のスマホのSNSアプリで、淡々と、ある作戦を立てていた。


スイート:ガーディアンフェザーの外道ぶりは、今に始まったことでは無い。だから、奴の話は無視だ。さて、奴が“跳弾”系のガンナーなのは、この状況からよくわかった。だから、こちらも希とパンドリオンの“跳弾”で攻める。ただしパンドリオン、奴は既に“限界突破銃”の『空間情報』、『数名の銃の特性』の情報を持っているから、与一のような“情報無しからの予測不能”は通じない、と思う。だから、“いまだに情報無しの要素”を絡めることにする。パンドリオン、わかるか?

パンドリオン:ああ。だが、手の内は最低限の開示で済ませたい。今回はスイートの他に、リキュールの力も借りることにしよう。跳弾の軌跡分析は俺に任せて、跳弾の空間製作は、スイートとリキュールの二人に任せる。テンニャンは“ルシフェリオン”で、奴のやばそうな弾丸を撃ち落としたり、できる限り回避していてくれ

テンニャン:了解アル!

リキュール:…作戦了解。限界突破させておくね


 そして最後に、スイートが付け加えておいたのだった。


スイート:アイスクリームの性格診断だ。チョコレートアイスは、元気だが、“だまされやすい”。因みに、俺の好みは、ベリーベリーストロベリー、診断は、“我慢強い”


全員:了解!


 そして作戦は、それから数分後、奴が最初の弾丸を発射したのと同時に開始される事になるのだった。

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