第16章 月光タワー・エントランス
次の日の夜までは、各人、ばたばただった。各人の装備の点検は全員がやっているわけだが、それ以外の準備が大変だったのだ。
1)お店のHPの更新で、当分お店を休む事を連絡→ステロイド担当
2)厨房の点検と閉鎖→テンニャンとスイートが担当
3)酒蔵の点検と閉鎖→リキュールが担当
4)店内の掃除と閉鎖→ぬこみんが担当
5)コーヒー関係と各人の部屋のチェックや掃除→リキュールと希が担当
6)月光タワーへの突撃準備→黒崎が担当
こうして準備が整った、次の日の夜、ムーンライトでの出発前の簡単な晩餐が行われた。テンニャンが気を利かせてくれて、厨房を使わなくてもよいレトルト系食材で作ってくれたのだ。
***
(某月某日 午後7時 ムーンライト居住エリア内 カフェバー『vona(ヴォーナ)』店内)
ぬこみん「それでは、出発前の激励会を執り行います! 僭越ながら、私が挨拶をさせて頂きます!」
リキュール「いいぞぉ! しっかり頼むわよ!」
スイート「スマートに頼むぞ。おっさんの長話みたいのはNGだからな」
ステロイド「元気が沸いてくる。こういうのはいつ開いてもいいな」
テンニャン「腹が減っては戦は出来ぬアル! どんどん食べるアル! でも・・・・・・レトルトだけど…。料理人として、腑に落ちないアル…」
黒崎「の、希。お前の所は、これから死ぬかもしれない戦いの前でも、こんな感じなのか!?」
希「そ、そうらしいです。僕は新参者だけど…」
ぬこみんは“おたま”を持って、挨拶を開始した。
ぬこみん「えー、それでは。野郎ども! いっちょ、やっちまおうぜ!」
黒崎以外全員「おーーーー!!!!!!」
黒崎「あ・・・・明るい・・・。でもこういうのも、良いかもな。死んでも、これなら後腐れ無い。だが・・・・・全員、死なせはしない!!!!!」
こうしてムーンライト居住エリアでの出撃前晩餐会は10時まで行われた。なぜ10時かと言うと、出撃が夜間侵入の0時だったからだ。ムーンライトの連中には、こういうことはかぎつけられたくない。黒崎の黒い車に全員乗り込むとは言え、すんなりエントランスを通れるとは思えない。故に、一番“侵入する”には都合が良い“0時”にしたのだ。
***
(某月某日 午前0時 ムーンライト居住エリア内 カフェバー『vona(ヴォーナ)店前)
リキュール「・・・・正直、もうちょっと、ここで店をやっていてもいいかな、とは思ったけど、私、どうあがいても、デイライトの人間なのよね」
スイート「ああ。でも、俺は、こんな“天と地”程分断された世界っていう関係を破壊して、ちょっと近所まで、って意味合いで、ここにまたやってきて、また店をやるぞ。そのときは、リキュール、テンニャン、ぬこみん、そして、マスター、全員集まる! それで良いね?」
テンニャン「あと、黒崎さんもバイトで入って貰うアル」
黒崎「お、俺もかよ?」
ぬこみん「当然よ。だって、『仲間』でしょ?」
黒崎「『仲間』・・・・・か。随分聞いてない言葉だな。でも、いい気分だ」
希「ああ、いい『言葉』だ。んじゃ、全員生きて、ここで集合! いいな!」
全員「おーーー!!!」
この後、黒崎の黒い車のトランクに、圧縮食料や備品を詰め込み、各自のムーンライトガンだけは“押収”される可能性があったので、各自でもって車に乗り込んだ。
***
(某月某日 午前1:05 月光タワー・エントランス)
運転している黒崎以外、全員、布の下に隠れて動かなかった。ここを突破出来れば、車も輸送出来るエレベーター経由で一気にデイライト居住エリアまで移動出来るのだ。戦闘はできる限り避けたかった。
月光タワー守衛「黒崎さんですか? 確かクビになって、下の調査をしていると聞きましたが・・・・・あ、先日の守衛から申し送りの書類がありますね…」
黒崎「それは助かる。では、さっさとエレベーターまで誘導してくれ」
月光タワー守衛「…ですが、その上に、今日付のFAXが1枚、挟まっているのですよ。送信者は『草薙』様だそうです」
黒崎「・・・・で、この車は、エレベーターに入れるのか? 入れないのか?」
月光タワー守衛「先ほど、この車が見えた時点で、エレベーターへの通路の入り口ドアをロックしました。草薙様のFAXの文面には、一言、『黒崎を通すな』、と書かれておりましたので」
黒崎「なら、タワー内部から徒歩ルートか」
月光タワー守衛「それなら、お気を付けて。ガーディアンフェザーから派遣された部下が午前0時の時点で放たれたそうです。階段入り口はこちらです」
黒崎「おまえは、この対応でいいのか?」
月光タワー守衛「私はエレベーターへの入り口の守衛が担当です。タワー内部への入り口の守衛は、さっき私に仕事を押しつけてパチンコに行きました。職務怠慢であり、その仕事は私の担当ではありません。私の仕事はやりました」
黒崎「・・・・・・すまん。ありがとう」
月光タワー守衛「私は貴方達に協力はしてません。それでは、良き旅路を」
***
こうして、月光タワー・エントランスは、楽なエレベーターは使えなかったが、徒歩ルートのタワー内部へは、何もイベントなく、すんなり入れたのだった。
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