クマさんの夜

梨兎

第1話 夜

クマさんはこっそりベッドから抜け出しました。

ゆうたろうくんが起きないよう、抜き足差し足忍び足。

クマさんは部屋の扉を音が立たないように、体が通る分だけ開けました。

辺りを見渡して、誰もいないことを確認します。

そろりそろりとクマさんは台所へ向かいました。

冷蔵庫を静かに開けました。魅力的な食べ物がたくさんありました。

シャリっとクマさんはリンゴを齧りました。

シャリシャリ シャリシャリ

クマさんは幸せな気分になりました。

今度はオムライスを見つけました。

クマさんは食べたい気持ちを押さえ込みました。

クマさんの存在を知られてはいけないからです。証拠を残してはいけません。

クマさんはそっと冷蔵庫を閉めました。

そろりそろりとクマさんはお風呂場へと向かいました。

残り湯で肩まで浸かり、体を洗うことにしました。

ごしごし ごしごし

クマさんは安心した気分になりました。

お風呂から上がると、ゆうたろうくんが使ったタオルで体をふきました。

クマさんはピカピカになりました。

クマさんは、足音を立てずにゆうたろうくんの部屋に戻りました。

すやすやとゆうたろうくんは気持ちよさそうに眠っていました。

クマさんは安心しました。

クマさんはゆうたろうくんの部屋で遊ぶことにしました。

片づけてある本棚から本を取って読んでみたり、おもちゃを出して遊んでみたり。

クマさんは夢中で遊びました。

途中、ゆうたろうくんが寝返りをうちました。クマさんはドキリと焦りました。

クマさんは散らかってしまったおもちゃを片づけることにしました。

音を立てずに、静かに、静かに。

片付けが終わると、クマさんはベッドに入ることにしました。

クマさんは、太陽の光をエネルギーにして動くことができますが、長い時間動くことができません。なので、すぐにゆうたろうくんの隣に戻らなくてはいけません。

クマさんには、まだまだやってみたいことがたくさんあります。

クマさんの夢は、町へ買い物に行くことです。

「クマさん……遊園地、たのしいね」

どうやらゆうたろうくんは夢を見ているようです。

「たのしいね、ゆうたろうくん」

クマさんは小さな声で返事をしました。

ゆうたろうくんが笑ってくれました。

「おやすみなさい、ゆうたろうくん」

クマさんは目をつぶりました。

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