決意


 少女は、アイドル声優を目指す事にした。

 神谷に連絡を取ると、事務所にお呼ばれ。

 通された部屋では、女性が花を活けている最中だった。

(美少女だなあ。高校生かな? 私と同じくらいの年齢だと思うけど、あのコもアイドル声優の候補生?)

「──よく、野に咲く花が1番美しいと言います」

「え? ああ、そうですね」

「自然なままの姿よりも美しく……。それが、生け花の神髄なのでしょうね」

 どうやら、作品が完成したらしい。

(自然なままの姿の方が美しいと思うんですけど……)

 どうやら、生け花の才能はナシのようだ。

「あなたが北大路さん?」

「はい。そうです」

「わたしは、社長の一ノ瀬。47歳です」

「あ、社長さんだったんで…………社長!? 17歳で!?」

「17歳じゃなく、47歳よ?」

「47歳!?」

「わたしは、社長の一ノ瀬。47歳です」

「『社長の一ノ瀬よん。17歳です』?」

「『社長の一ノ瀬。47歳です』よ?」

「(同い年くらいだと思ったらママより年上!?)美魔女さんですね……! 27歳にすら見えませんよ」

「ありがとう。でも、その子の母親なのよ?」

「その子って、神谷さん……?」

「そうだ」

「あれ? でも、名字が……」

「一ノ瀬は、社長の旧姓兼芸名なんだよ」

「芸名……。もしかして、社長さんも?」

「ああ。アイドル声優だ」

「47歳のオバサンだけどね」

「あの……本当に47歳なんですか?」

「本当よ。よく『若返りの魔法でも使ってるんですか?』って聞かれるけれど」

「社長は、魔法使いを演じる機会が多いからな」

「北大路さんは、どんな役を演じてみたい?」

「やりたい役……ですか? うーん……。アイドル……でしょうか」

「どうして、アイドルなの?」

「私が憧れたアイドルが、アニメのキャラだったんです。彼女がキラキラしてて、彼女に憧れて……。アイドルにはなれなかったけど……。でも、私、アイドルを輝かせることができる声優さんを目指したいんです。自分の輝きと、キャラの輝きが……あの……上手く言えないんですけど……。アニメの中でキラキラしてるアイドルに憧れた私が、今度は、誰かをキラキラさせられたら素敵だな……って。そう思うんです」

「素敵じゃない、北大路さん」

「ますます、君をプロデュースしたくなった」

「あ、あの……。ありがとうございます。なんだか語っちゃって、ちょっと恥ずかしいですけど……」

「分かっているとは思うが、素質だけじゃ、アイドル声優にはなれない」

「はい」

「俺のプロデュースについてこれるな?」

「はい! 頑張ります! 私、アイドル声優界のトップを目指します!」

「大きく出たな」

「わたしたち、ライバルね」

「え!? あ、今のは勢いで言ったと言いますか……」

「トップを目指すんじゃないのか?」

「め、目指します。私、アイドル声優界のトップを目指します!」

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