第10話 置き忘れた沸騰石

花山はなやまさん?大丈夫 お腹痛い?」

運動場から部室棟までの間 ずっと先輩が話してくれていたような…

私はどうにも記憶がなかった

辛うじて ここまでの道程みちのりやら顧問の先生が 厳しいとか先輩の名前までは聞き逃さなかった

その後からは全て真っ白だ…

聞く言葉が耳から滑っていく感覚

今日はもうダメな日だ…


「よし!じゃあここ 我らが部室です」

着いてしまった…どうしよう…

「廊下に面した部室棟3階の角部屋!窓から覗くは向かいの建物!化学準備室がチラチラ見える!いい場所でしょ」

待って…ちょっと…

「いくよ、開けるよ、心の準備は済んだかな」

あ……

コンコンコン

先輩がドアを軽くノックする、まずい…

「おーい、開けてくれーい」

部屋の中からガサゴソと音がする…ダメだ…

「先輩っ、私、ちょっと忘れてた用事が、明日また来るので、今日はちょっと……ごめんなさい」返事を待ってる余裕はない…

走った、廊下の反対側にある階段前まで走って走って一呼吸すうの間に階段を半フロアずつり校門まで走り抜けた…

途中 天井にぶら下がるホルスタインや 教室の窓から飛び出る鮮やかな風船らしきもの をみかけたような、気になるけれど、戻って確かめるわけにはいかない…


校門を抜け、坂に差し掛かったとき

私の衝動は落ち着いた、というよりも

ホッとした…という方が正しい


坂を下る私の背中に何か音楽のような音を差してきた

わかってる、今日の私は おかしい……



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